Bounty Dog 【アグダード戦争】248-249

248

 今は”掃除済”の2大勢力の大将達は、イシュダヌの正体を勿論知っていた。『アマル』のエードウ・ビィ・ファヴィヴァバは、前奴隷商会長だったイシュダヌの父親とも、己のとっくの昔に”民間お掃除部隊”に掃除された父親繋がりで交流があり、4つ歳上のイシュダヌとは幼馴染に近い間柄だったが、実質は軍曹がラドクリフ邸で読んだファヴィヴァバの日記に記されていた通り、家来のように何時もコキ使われていた。
 『新アグダード王国』の、北西大陸の最西部にある自由と最強の軍事力を謳うとある先進国出身の陸軍元少佐ナスィル・カスタバラクは、イシュダヌからは”商品の素”扱いしかされていないと勘付いていた。その上で軍人という力の象徴を職にしていたカスタバラクも相手を非力な弱者だと軽んじており、兵士や民間人を使った人間爆弾テロで狙うのは何時も、ファヴィヴァバ関連の施設では無くイシュダヌが関わっている市場や街や阿片畑だった。
 カスタバラクは学校に一切通えなかった人間だが、基本的な教養は影武者を使って身に付けており、道徳の教科書も勿論読んでいた。其処に”聖人”として書かれていた相手の顔を見た瞬間に受けた衝撃は、軍曹達やヒュウラやリングと同じだった。そして真実を知った瞬間に、心が闇に染まり切っていた彼は確信した。
 ーー人間は、やはりエゴイストばかりだ。全て滅ぼしてやる、俺の為に。ーーと。

 2人は”彼”とも面識があった。ある日の会合の時に、イシュダヌが連れてきて御披露目をしてきた。ーー己の後継にする予定の人間だ。若くて大人しい子だが、奴隷と麻薬の商売方法は修行させて叩き込んでいる。己が勢力の長を退いてアグダード外で”兵器費の融資活動”に尽力しても、どうか虐めずに仲良くしてやって欲しい。ーーという依頼も併せて。

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