Bounty Dog【Science.Not,Magic】70

70

 大勢の”足”が動いたり、利用される為に待機している中、其の”足”も待機しながら、宙を泳ぐようにジタバタ動いていた。被っていた羊毛布団を突き破って、鋭く尖った硬い足の爪が露わになる。爪が生えている足の指は人間と同じ5本だが、黒い縞模様付きの金色の細かな毛が、指先から足全体、腕全体、首から上以外の体全体に至るまで隙間無く生えていた。
 人間の服を着ているので手足と首の肌だけ露出している此の虎の亜人は、寝相が悪い。手足の爪で無意識に引き裂いたボロボロの布団に巻き付いて、ベッドから落ちるなり目を覚ます。ガルルル、ガルルル、唸りながら灰色の釣り気味の目を僅かに開けると、丸い船の窓から差し込んでくる眩しい朝日の光を受けて、瞼を急いで閉じた。
 ガルルル、ガルルル唸りながら、目に愛嬌が残っている子供の雄虎は布団に巻き付いたまま、ベッドによじ登って二度寝した。虎人(フーレン)もしくはハリマウォと呼ばれる虎の亜人は、夜行性で普段は日中寝て過ごしている。
 此の虎の亜人の名はバグフィリィ。彼は夢を見た。起きる前に見ていた夢の続きを、バグフィリィは見る。
 大好きな”おとーさん”と先日行った、他のハリマウォ達もジャングルで暮らしているらしい東南の島での、己の誕生日記念旅行の楽しかった思い出の夢。
 其の時に撮った写真の1枚を入れた写真立ては、ベッドの側で未だ横倒しになっている。

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