Bounty Dog 【清稜風月】216-218
音楽は、奏でても聴いても記憶の書庫に置いている思い出を、埃を被った遠い過去の思い出も鮮やかに蘇らせてくれる
216
日雨はウンウン唸り続けていた。人間に問われた”鍵”の名前が何なのかサッパリ分からない。謎々が解けない虫の亜人を監視しながら、コノハは虫から出された昼食(ひるげ)に一口も手を付けず、日雨の家の食卓で保護任務を実行していた。
昼食は至極美味しそうな見た目で匂いも食欲を唆る良い香りを放っているが、魔界で怪物だけが食べる死の飯だった朝食(あさげ)が、未だコノハの腹部を攻撃し続けていた。現在は痛みが微々たるモノになっているが、これ以上彼女は何も喪失したく無かった。
”其れ”は己の居場所に戻っていた。日雨の寝室の端でスヤスヤ眠っている。家の中にいる人間と亜人は、家の外で騒動が起こっている事に微塵も勘付いていなかった。
コノハは『通信』が復活している事に勘付いていない。日雨は首から胸にぶら下げている双眼鏡を外せば、未来が変わる事に勘付いていなかった。
217
生き物の命を奪う程に毒性が強い金属の1つに水銀がある。しかし水銀と”銀”は分子構造が全く異なる。純銀には毒が無い。其れ処か猛毒のヒ素に触れると変色反応を示す特徴がある為、我々の世界でも古代から中世時代に、権力者や貴族が使う食器には暗殺対策に純銀が用いられていた。現在でも食事の際に純銀の食器を使ったり、出産祝い等で純銀の食器を贈る風習が、複数の国で文化として残っている。
銅も純製の銅は毒が無い。命を繋ぐ栄養素としても必要不可欠な物質である。だが銅は非常に錆びやすい。道具の材料として使用する際は、別の金属を混ぜ込んだり塗料をコーティングに使う。
銅製の鍋や食器は”酸性の液体を入れない限りは”基本的に無害である。銅貨も”錆びて酸化しなければ”基本的に無害である。
塗料は、塗っている時すら吸わないように用心しないといけない程に、強い毒性がある化学物質が使われている。
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