Bounty Dog【Science.Not,Magic】18-20

18

 半月前に伝えられた通り、カロルとシルフィ・コルクラートは交信出来なくなった。シルフィはヒュウラに直接尋ねるという方法を用いてみたが、ヒュウラも「頭の中がずっと空っぽになっている」と、何時もの5W1Hが無い喋り方で答えてきた。
 シルフィは、毎夜寝る前にメモを見直す。ヒュウラの身内だろう冥土の魔犬が半月前に予言した、此れから起こる未来を確認してから毎日眠る習慣が出来ていた。
 ヒュウラに、命の危険が2回起こる。
 2回目の危険は、ミト・ラグナルが原因になる。
 シルフィは半月前から、ミトに別件の任務を与えてヒュウラの側に置かないようにしていた。中央大陸の脱走亜人再捕獲任務時は現場に連れて行かずに、あの”鼠”の監視を任せていた。
 半月前から決めている。カロルの故郷に行き、彼が言った”母親”に会う。彼女を保護して、全てを喪失させる『死の木』について尋ねる。そして其れ迄に”切り札”ヒュウラに訪れる、生命危機を回避する。
 彼は今も、シルフィの大事な切り札だった。
 彼は弟デルタの形見で、カロルの形見でもある。

19

『アイツ、ヤバいやっちゃでそうろう』
 ヒュウラは半年以上ぶりに”子分”と喋った。彼には遠い砂漠の土地に子分がおり、其の子分と現在、人間から借りている通信機を使って喋っている。
 コルドウと地元の人間達に呼ばれているモグラの亜人・鋼爪土竜族(こうそうどりゅうぞく)のミディールは、相変わらず、あぎゃあぎゃ喚きながら独特語を多用して”親びーん”と会話する。
『きっと服のセールが多いのでござんすね。まーたこの間も、1人で勝手に何処かに行って、服ボロボロにして帰ってきたでやんす。1着も買って来ずに、着てるお服をボロボロにしてるだけ……。服が破ける程激しい服のセール、あっしは未だ知らないでござんすけど、あっしは土の中から攻めるでやんすから、着てる服をボロボロにはしないでそうろう。自信タップリ!7割引以上割引品狙い!!持ってけドロボー大特価セールを打ち勝つ、秘密の作戦を何個も実は考えていてーー』
 ヒュウラは返事も反応もマトモに聞きもしなかった。ミディールがまたあぎゃあぎゃ喚いてきたので黙らそうと口を開き掛けた時、何かが何かを叩く音が大音量で聞こえてきた。

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