Bounty Dog 【アグダード戦争】47-48
47
通信施設の“ゴミ掃除”が終わってから、また”民間お掃除部隊”は極々小さな掃除以外はアジトに引き篭もる日々を送っていた。『世界生物保護連合』の保護官達と亜人達がアグダードに来て、もう直ぐ1ヶ月が経とうとしていた。
ミトは掃除任務の後で、また心労を起こして数日寝込んでしまった。が、見兼ねたシルフィに強引に起こされて、今後任務のお荷物にならないように、”お掃除部隊”から特訓を受けさせられていた。
ヒュウラは、朱色目の黒布に連れて行かれるミトを、洞窟の一角から無表情で眺めていた。ミトは日に日に窶れている気がした。茶色い大きな目の下に、青黒いクマが付いている。目には常にパイロット用のゴーグルが被さっていたので、表情が良く分からなかった。ヒュウラは、そんな壊れ掛けているミトの心の支えに己がなっている事に、気付いていなかった。
ヒュウラはミトから毎日のように、おやつにと煎り豆を貰っていた。着々と増えていく豆の数は、現在135粒も溜まっていた。
胡座を掻いて座っている場所の近くに、保存食の空き缶が落ちていた。手で引き寄せて、拾い上げる。持っている豆を全部入れて振ってみた。量が多過ぎて音が全く出なかったので、少し食べた方が良いかと思ったが、ヒュウラは黒豆煎餅も含めて、豆は余り好きじゃなかった。煎餅は海苔付きの醤油煎餅しか食べなかった。だが煎餅は、どんな煎餅もアグダードに一切無かった。
豆を缶に入れたままポケットに収めると、ミトが向かって行った方向から怒号が聞こえてきた。声は軍曹だった。朱色目がミトを注意する声は毎日のように聞いていたが、軍曹がミトに怒鳴る声は初めて聞いた。
ミトが凄く”叱られて”いた。叱り方を覚えたいヒュウラは、観察する為に特訓場に向かった。
ここから先は
¥ 100