Bounty Dog【Science.Not,Magic】12-13
12
カイ・ディスペルは、念願のトマトを食べた。本当は大きなトマトを大口で丸齧りしたかったが、文句吐きは我儘でエゴイスチックで、スーパーハイパー最低な行為である。加えて誰かに善意で物を貰ったのに相手の前で平然と文句を吐く行為は、肉体から魂までの全てがスーパーハイパーウルトラ、ミラクルスペシャルアルティメット、ダサい。
陸鮫の歯で開封された細切れトマトの缶詰が、焚き火の上で煮立っている。鼬は移動中に初めて”珍味ハンター”に遭遇したが、何故か人間達は、鼬が背負っていた別の人間の姿を見るなり逃げて行った。
カイは中央大陸でも半日後に、盗み撮り写真と共に『ウェイシエン(危険)』と、角々した大きな独自語文字が書かれた大量の張り紙を大国の領土内に貼られまくる。魔界と呼ぶ冥土に住むフレームだけの黒縁眼鏡を掛けた狼は、全く興味が無かったのでシルフィに伝えなかった。ヒュウラとシルフィには全く関係無い、”生”にも”死”にも関係が無い人間達が行う未来の出来事だった。
獣犬族のカロルは、ヒュウラが関わる未来だけをシルフィに予言した。鼬の未来を狼は伝えていない。人間の少年の未来も、愛する子犬に”今は”関係無いから伝えなかった。
煮込まれて熱々のスープのようになった缶詰トマトに、カイは白い肩掛け鞄から北東大陸製のアウトドア用スパイス&ハーブ入り塩胡椒を取り出して味付けする。人間に見た目がそっくりな鼬の亜人は、簡易的だが人間が作る美味しそうな料理を興味津々に観察した。味付け中に中身が噴きこぼれたので慌てて焚き火を消す。熱々の細切れトマト缶スープを少し冷ましてから、カイと鼬は一緒に仲良く飲み食べた。
カイは腹ペコだったので、缶詰トマトスープを殆ど貰って無我夢中で食べた。人間から調味料も時折盗んで料理のような処理をした”珍味”を食べる事が趣味だった鼬の亜人も、満足そうにトマトスープを楽しむ。極々普通のアウトドアな食事が済むと、カイは赤紫色の大きな目を輝かせながら、鼬の亜人に話し掛けた。
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