Bounty Dog 【アグダード戦争】193

193

『テメエが俺のピンバッチに触るな、ヒシャーム。スカーフも。其れ、サディーク(友達)から借りてんだよ。破いちまったら、俺が凄えブチギレられちまう』
 ヒュウラは閉じていた瞼を開いた。大きく見開く。ヒシャームの動きが止まっている。時が止まっているように、相手は全く動かなくなっている。
 また救われた。今度は己も命を救われた。救ってくれたのは、ヒュウラが今直ぐにでも会いたい人間。今直ぐ守りに行きたい人間。名前は教えてくれないから知らない。だけど渾名を2つ付けられている事は知っている、人間の男。
 同じ人間の”お掃除部隊”で一緒に活動している『友』には”ガビー(アホ)”と呼ばれており、己を含めた他の仲間達からは”軍曹”と呼ばれている人間だった。軍曹の声が首輪から聞こえてくる。軍曹は機嫌が悪そうだった。
 ヒシャームに向かって、首輪越しに話し掛ける。
『ちゃっちゃと離れろ、テメエ。ヒュウラが首に付けてる俺のピンバッチは、俺がやったんだ。ヒュウラは嘘吐いてねえよ』

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