Bounty Dog 【アグダード戦争】53-55

53

 ヒュウラがコルドウの単独自己判断保護任務を行なっている最中の、一方その頃。
 アグダードの”民間お掃除部隊”と『世界生物保護連合』3班・亜人課の、ヒュウラを除いた保護部隊達は、アグダードの地図上で西側と東側の境界線の部分に来ていた。国境に設ける人為的な仕切りは無く、周囲は枯れた大地と岩で出来た丘、乾いた砂漠地帯の風、夕闇に染まり掛けている赤と青が混じる空という、星が作った自然ばかりに覆われている。
 3点、人間が作った建物が見えた。西側にカスタバラク軍の通信施設、東側にファヴィヴァバが管理している金融施設があり、西側の施設の奥に、小さく屋敷らしき建物が見えていた。
 双眼鏡から目を離したシルフィ・コルクラートは、小さな溜息を吐いてから外していた銀縁眼鏡を掛けると、傍で待機している味方勢に振り向いた。浅黒い肌をした腕を布から出して組んでいる朱色目の黒布を先頭に、扇のような形で”お掃除部隊”の黒い布を被った男達が群れ立っている。
 ミト・ラグナルもその横に立っていたが、今回は布を被っていなかった。シルフィと、彼女の傍で伏せているリングも布を被っていない。ミトはゾンビのように生気を全く感じなかった。青黒いクマが掘り込まれた下瞼の上に付く、茶色い大きな眼が死んだ魚のようになっている。
 再び溜息を吐いたシルフィが群れに歩み寄った。朱色目とミトの前に立つと、キョロキョロ辺りを見渡す。
 軍曹の姿が、何処にも見当たらなかった。

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