Bounty Dog【Science.Not,Magic】94-96
94
Q2:カニに似てると、ずっと思いませんでしたか?
A:え?何がですか?
Q2:失礼。何でもありま……いや、やっぱり聞こう。カニですよね?カニ。あなたも絶対、アイツは頭の形がカニに似てるとーー。
Q:御免なさい、迷惑ですよね。ちょっと。貴方は其れを言いにわざわざ面会中に横槍を入れに来たの?さっさと席を外しなさい。早く!…………。(長い溜息)
A:…………。
「じゃんじゃん焼くぞ!夜まで露店は賑わうからな!!今日は今年1番の稼ぎ時だ!!じゃんじゃんカニを焼けー!!」
「はい!追加の分も沢山仕入れましたし!!」
「じゃんじゃん、カニを焼くぞー!!」
ジュージュー、ジュージュー(網焼きされているカニの身から出る汁が炭火に当たって弾ける音)。
「じゃんじゃん!じゃんじゃん!カニをーー」
「カニと鼠は、テムラビルに居ると思う」
セグルメントが突然ほざいた。隣を歩いていた相棒の忍者が怪訝そうな顔をする。背後から付いてくる狼の亜人は、眉間に穴が開いたウマのブリキ人形を両手で握り締めている。顔は何時も通り、無表情だった。
紅志がヒュウラの代わりに顔付きと言葉で反応する。
「は?」
「だーかーらー、紅志ちゃん。カニと鼠だよ。鼠は言わずもがな。カニは、あのお騒がせ科学ボーイの事だよ」
セグルメントが自信満々に反論した。両手を頭の左右に添えて”カニの脚”のような形にする。赤ん坊をあやしているようにも見えるポーズをしている相棒の男に、紅志が緩めの睨み目を向けると、仏頂面のまま顔のどのパーツも動かないヒュウラは、手に掴んだブリキのウマを上下に揺らし動かした。
カラカラ、カラカラ音が鳴って、やがて音が出なくなる。ヒュウラの足元に小さな四角い物体が落ちていた。仏頂面で拾って摘んで、繁々と観察する。
セグルメントが”いないいないせずにバア”のポーズを辞めて、ヒュウラの指に挟まれた物体を見た。感心したように頷いて、言う。
「マイクロチップだな!」
紅志の睨み目が険しくなった。機械に長けていない東洋の隠密を無視して、機械に長けている東南の漁師が、機械という物体を未だに理解出来ない生き物から機械を受け取る。亜人と一緒に繁々と”まいくろちっぷ”を観察した。所々に傷が付いているが、セグルメントはニヤニヤ笑って、ヒュウラの顔を見ながら再び口を開く。
「傷は付いているが壊れて無さそうだ。だからこの俺、セグル様のパソコンに早速組み込んでみよう。さっき忍者ボディ越しに見たお姿よりも、爆速神エーデンバーグのシャッチョーに関する有力情報が手に入るかもな!」
紅志は無視して先に行こうとしたが、セグルメントに着物を掴まれて無理矢理静止させられた。忍者は相棒が作業している間、仕方無く狼男と人形遊びを始める。
手持ちの玩具は、亜人が持ってきたブリキのウマ人形1体だけだった。人間の忍者がヒヒーンと鳴き真似をして、パカパカ目の前で本物のウマのように動かしてやっても、亜人の狼は返事も反応もしなかった。
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