Guilty Braves Truth0/最果ての村カルッサ−人と「魔導士」と「幸せの土地」【0-4】
0-4
「説教出来る相手を間違えているぞ小僧、戯言は彼の世でほざけ!」
男が手にした斧で地面を叩くと、兵士達がカマックを囲む。少年が腰から引き抜いた剣は卑劣な大人達の姿を刃に映すと、澄んだ金属音を響かせた。
「武は「止める」という字を含む、争いを止める道が武道なり。剣は悪しき者から弱き者を守る為に握る物。気高く純真成れば斬れぬものなぞ無し!
悪い奴は俺が成敗してやる!食らえ、イズモヤマト流・剣奥義『華散斬』!!」
左手に掴んだ剣で地面を斬る。発生した衝撃波に削れた土や草が花弁のように纏わり付くと、兵士達に襲いかかる。
風の波を受けて瞬く間に倒された部下を見て舌打ちをした男が再び斧を叩くと、増援した兵が強襲を仕掛けてくる。斜め右からの斬撃をかわしたカマックは、続く左からの攻撃をナイフで弾き、背後からの突きを身を捻って避けると、動きを止める事無く反撃に転じた。
「『廻円斬』!!」
捻り戻る上半身に併せて敵の胴を斬る。そのまま遠心力を加えると、絶え間なく斬撃を与える。
鎧を割り壊されて意識を失った兵士の脇から新たな敵が襲ってくる。前方から加えられた叩き斬りをカウンターで刺し返すと、背後からの横斬りを振り返る事無くナイフで防ぐ。剣の峰で素早く突いた胸部が離れるや否や、俊敏に斬られた相手は瞬時に戦闘不能に陥る。
長い鉢巻きの間から見える洗練された剣技は、隙を全くみせない。次々と帝国兵を倒していくカマックに、遠くでトカライと共に見守っていたハルは圧倒されていた。
――強い。戦闘技術に格の違いを感じる。さっきまでの自滅気味の頼り無いイメージが嘘だと思うほど、目の前の少年は恰好良かった。
「カマックは強いのだ。正義感も強いから面倒臭くなる事が多いけどなのだ、のだも何度も助けられているのだ、だから安心するのだ」
威張っているトカライの頭を撫でたハルは再びカマックを見る。勇敢に戦う少年の姿は、足元に落ちている写真の中の自分の笑顔よりも希望を与えてくれた。
「『緋走耶雲』!!」
ナイフで五月雨突きをした後、剣で大降りの上斬りを三発加える。回転を逆にして繰り出した一撃で兵を地面に叩き倒すと、カマックは静寂した空間に立つ敵将を睨んだ。
「見事だ。その武器、見た事が無い。お前何者だ?
……まあ良い。そうならば、こうするのみ!!」
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