Guilty Braves Truth0/最果ての村カルッサ−人と「魔導士」と「幸せの土地」【0-3】

0-3

 平原地帯の林の朝は、冷えた新鮮な風が草木を揺らし、車のタイヤが突き出た沼に幾重もの波を作り出す。
 天に再び浮かんでいる虹を眺めていたカマックは、握っていた鞘付きの剣を腰に戻す。日課の素振りを終えてカルッサ村のハルの宿屋に帰ると、部屋のベッドで爆睡しているトカライを布団を掴んで振り起こした。
「のだのだ、もう朝なのだ?朝バナナ茶を飲むのだ?」
「いいです、いらないです」
 寝ぼけたトカライが差し出した湯呑を丁寧に断る。開け放った窓の光で目を覚まさせた相棒にウエスタン帽子を被せると、荷物を入れた袋を担いだカマックは、笑いながら声を掛けた。
「ハルの所に行こう、昨日の事を謝りに」
「のだ、カマックは悪くないから気にしなくても良いけどなのだ、禿げたカマックが気になるのだ。のだが禿げてしまうのだ」
 黄色い湯気が大量に出ている湯呑を帽子の中から取り出したトカライと共に、カマックはドアを勢い良く開ける。と、
 部屋の前に立っていたハルの顔に直撃した。
「キャアアアアアアアアアア!痛いいいいい!!」
「ギャアアアアアアアアアア!堪忍してええ!!」
 双方は絶叫と共に寿命とHPと精神的な何かを擦り減らせる。衝撃的な場面の筈なのに無視をしたトカライは蹲っているハルに踊りながら近付くと、持っている湯呑を差し出した。
「のだ、おはようございますなのだ。アツアツの朝バナナ茶飲むのだ?」
「いらないです、気持ちだけ受け取っておきます」
 飲み物の味を知っている少女は丁寧に断る。爽やかさを失った騒動の末の沈黙は、ハルの鼻血が止まるまで続いた。

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