Bounty Dog 【アグダード戦争】119-120

119

 絶対に掛かってくるのはありえない人物からずっと呼び出されている事に、漸く気付いた。通信機の表示名を見て、カスタバラクの目が潤む。己を呼び出している『ジャック』の通信機は、アグダードに作った私邸の秘密部屋に1番始めに捨て置いた物、他の何とも違って大事に引き出しに仕舞った、捨てるか捨てないか何度も迷って、形見の星の勲章を取って代わりに捨てた、ジャックが”牢獄”から己を連れて逃走する時に”ぼく達が離れた時用”にとくれた自分と彼専用の電話だった。
 ヒュウラがコルドウ達を一斉に呼び出している。無数の土山が化け犬に集まってくる。右手に拳銃を握ってヒュウラの切り傷だらけの喉を狙いながら、左手で通信機器を取り出して応答したカスタバラクが聞いた第一声は、冥土に居る親友の少年の声では勿論なかった。
 が、警察官を夢見た親友が堪忍袋の緒を切って言ってきそうな事を、聞いた事のない若い女の声が言ってきた。
『やっと出たわね、ゴミ男。私は本来は人間の法律は扱えないけど、救いようが無いほどお前は法に違反している。速攻逮捕して処刑よ。今何処に居る!?居場所を教えなさい!!今直ぐ行って、ヒュウラを助けてお前を掃除してやる!!』

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