Bounty Dog 【アグダード戦争】59
59
ヒュウラの真上に、天井と床を隔てて人間が居た。浅黒い肌と白い髪をしたアグダードの現地人の男で、木製のベッドの上で寝転がって、雑誌を読んでいる。
雑誌はアグダード地帯の外の国が発行したもので、表紙にはアグダード以外の各国の美男美女の人間の写真と共に、人間の世界共通語の文字で「世界の美しい顔100選」と書いていた。
興味無さそうに、美しいと称される人間達の顔を適当に流し見てから、雑誌をゴミ箱に放り捨てる。仰向けから横向きになって、サイドテーブルに置いている、ひょうたんのような形をした硝子の器に入った紅茶を一口啜る。
中東の紅茶・チャイをお行儀悪く飲んで、小皿に乗っている、ピスタチオが入った甘い中東の焼菓子・バクラヴァをお行儀悪く手掴みで食べる。
男はカスタバラク軍の兵士で、この施設の見回りを担当しているが、サボっていた。侵入者に気付かずに仮眠室を勝手に陣取って、のんびりと寛いでいる。ベッドに散らばっている雑誌達の中から、適当に選んで手に取り、寝転がりながら開いた。
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