Bounty Dog 【清稜風月】116
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ヒュウラの魂胆は、和菓子屋を己の足で潰し壊して睦月の”意味が無い探偵ごっこ”を強制終了させてから、山から出ると死ぬ面倒臭い体質である日雨を残り4日の櫻國滞在期間中に捕獲して、シルフィから知恵を貰った後に相手を生かした状態で、睦月を適当な場所とタイミングで撒いてから保護組織の支部まで連れて帰るつもりだった。
魂胆と真逆の方角に事態が向かってしまっているが、網入り状態から漸く解放されて自由になったヒュウラは、微塵も動揺せずに冷静のまま、睦月と一緒に町の端にある港に行った。半開きになっている巨大な木製の扉を潜って、己がシルフィ達と来て別れた、櫻國に観光・訪問する人間用に作られている入出国審査所という『箱』がある港の広場に着く。磯の匂いを纏った風を身に受けてから、深い青色をした広大な海が目線の先に現れると、
睦月が先行していたヒュウラの背を引っ張って、己の背の後ろに隠した。
広場に、槭樹・イヌナキが居た。武器の大太刀を鞘に収めて腰に差している。ヒュウラの天敵のような存在と化している櫻國の指導者の1人は、あの”黒い本”を手に持った状態で、睦月よりも先に入出国審査所で担当の人間達と何かを話し合っていた。
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