Bounty Dog 【アグダード戦争】39

39

 シルフィは、アンテナが付いていない通信機の画面を見て顔を顰めた。ミト・ラグナル保護官と音信不通になっている事は非常に喜ばしいが、銀縁の眼鏡のレンズに覆われた青い目は、限界まで釣り上がっていた。
 液晶画面には黒い背景の上に黄緑色の格子模様と太線が引かれており、その上に赤と黄色の点が表示されている。赤は特別保護官兼超希少種、黄色は”いつもは”特別保護官兼超過剰種だが、今は保護対象を示していた。
 黄色い点が、自分の誘導”ナビゲート”を無視して見当違いの場所に向かって動いていく。赤い点も動いていた。黄色の点を追いかけている。
 異常が発生した時、最初は発信機に設定している色を誤解していたのかと思った。黄色が赤の”いつもの”行動を取り始めたからだった。だがシルフィの色の認識は間違っていなかった。ヒュウラの首輪のカメラで、事態が余りにも予想外になっていると確信した。
 ヒュウラが、言う事を聞かない軍曹を止めようとしている。自由に動いていたのは亜人の青年ではなく、人間の青年だった。

ここから先は

3,594字

¥ 100