Bounty Dog【Science.Not,Magic】105-106

105

 バグフィリィは、己がモデルになった”キ”の会社のマスコットに起こされた。ガルルル、ガルルル唸り声を上げてから、アラームに併せて大きな咆哮を上げた子虎のバグの声で、虎の亜人が飛び起きる。
 ガルルル、ガルルル唸りながら、眠気眼を擦り擦り移動して、社長室のデスクの上に乗っている通信機の画面に住んでいる”友達”に挨拶した。虎のバグはピョンピョン跳ねて、動作で挨拶を返す。ガルルル、ガルルル唸り合ってから、現実で生きている虎は電子の虎の頭を指で撫でた。電子の虎はゴロゴロ喉を鳴らしてドット絵のハートマークを出す。
 全ての生き物に懐いている大人しい虎にアイコンを押して骨付き肉をあげてから、バグフィリィも社長室に設置された冷蔵庫を開けた。綺麗に加工された骨付きの鶏肉が数本入っている。”キ”が貼ったのだろうメッセージが冷蔵庫の扉にあった。バグフィリィはメッセージ通りに2本だけ鶏肉を取り出して食べた。
 骨ごと生肉を食べながら、バグフィリィは思った。キに会いたい。一昨日から会えていない。キをこの『箱』の中で探そうと。
 キを探している間、もしもキの敵を見付けたら退治しないと、とも。

 Q:あなたに敵は以前から多かった?
 A:まあ、ビジネスをしていますから。ライバルの会社は沢山いらっしゃいます。でも、物理的に傷付けてくる敵は誰も居ないと、私は信じています。
 Q:でもバグフィリィは、そう思っていなかった。
 A:あの子は野生で生まれた亜人ですから。私は敵とか、そういうのは教えた覚えが無いのですが……。
 Q:……。
 A:あの子の純粋さを有り難く思ってはいけないと、重々承知しています。人間や他の生き物に悪戯しないよう、何時も言い付けていましたし。
 Q:でも……。
 A:…………ええ。大変申し訳無く。

 実はヒュウラの横にずっと居るコノハ・スーヴェリア・E・サクラダは、テムラ・オリジン・マジック・カンパニーの本社ビルから少し離れた場所で待機する、人間の男2人と亜人の雄1体と一緒に円形状で立っていた。ビルに背中を向けているセグルメント・カッティーナがビルの出入口を一瞥する。受付係も電子板の中で生きている虎の姿も見えないが、上半身を己が整列させた人間と亜人の側に向けてから、他よりもいち早く開口して意見を伝えた。

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