Bounty Dog 【アグダード戦争】40

40

 軍曹は、電源ボタンを連打する。ヒュウラに「足りない」と言われたので、押すスピードを加速させる。
 銃撃の音と爆音と人間が出す悲鳴が聞こえてきた。炎が熱気を含んで吹き荒れる。軍曹はボタンを連打する事だけに集中していた。ヒュウラに「足りない」と言われたので、指の動きが更に加速する。
 ゴムがプラスチックに当たるプッシュ音が聞こえなくなった。「当たってない」ヒュウラはボタンの上で空振りしている軍曹の指を指摘した。軍曹は目を限界まで吊り上げた。テレビのリモコンの電源ボタンを猛連打する。ボタンから細い煙が上がってくる。
 軍曹は突然、指を止めた。電源ボタンに熱が籠っている。ヒュウラは仏頂面で軍曹を見つめた。軍曹は目を剥いた。目が剥けた軍曹はヒュウラを凝視すると、
 自分達が遊んでいる場所が、明らかに可笑しい事に漸く気付いた。
「すまねえ!俺、ゴミ掃除しねえとだった!!」
 軍曹はサッパリとヒュウラに謝った。ヒュウラは仏頂面のまま、正常状態で口だけ動かした。
「掃除」
 軍曹は答える。
「そうだ!ゴミ掃除だ!!此処にゴミ人間どもを掃除しに来てんだった、俺達は!!だから、ボタン遊びは寝ぐらに帰ってからしようぜ。俺このボタン、指の腹で燃やしてやらあ!!」
 軍曹はリモコンをヒュウラに返した。ヒュウラは電源ボタンが窪んだまま戻らなくなっているリモコンを見てから、軍曹を見て、返事した。
「御意」
 リモコンをポケットに入れる。左のポケットに入っているライムと収納場所を交換してから、ヒュウラは軍曹を背負った。
 軍曹はケラケラ笑ってから、アサルトライフルを構えて指示した。
「んじゃあ、さっさと掃除を終わらせっぞ!!俺、寝ぐらに帰ったら、お前を凄えワシワシしたい」

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