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アメリカ人の物語4 建国の父 ジョージ・ワシントン(上) 連載35号

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※憲法制定会議からいったん離れます

危機の予感

ワシントン政権を最初に襲った大きな危機がヌートカ危機である。ヌートカ危機は、北アメリカ大陸の北西部沿岸で商業帝国を拡大しようとするイギリスとスペインが衝突した事件である。

ことの始まりは一七八九年である。イギリスの毛皮商人がヴァンクーヴァー島西岸のヌートカ入江付近に交易所を設けるために小屋を建てた。かねてより大西洋沿岸に植民地を築いていたスペインは、イギリスの行動に警戒感を抱いた。ニュー・スペイン総督が派遣した海軍士官は、イギリスの居住区を破壊し、二隻の船を拿捕したうえ、乗組員をメキシコに送った。イギリスは船舶と乗組員の即時解放と主権侵害の賠償に加えて、南北アメリカ海岸の入植権をスペイン政府に要求した。イギリスとスペインの緊張が高まり、開戦の危機が迫った。

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