アゴスティーニ『恋するオルランド』5巻第12歌
あらすじ
マンドリカルドはプルーデンティア[思慮]という名の乙女の導きで「死の道」の試練に挑む。スペランツァ[希望]の舟に乗って嫉妬の海を渡る。舟を降りた後、マンドリカルドはディレット[享楽]とラシヴィア[好色]の誘惑に負けそうになるが、再びプルーデンティアに救われ、隠者のもとに行く。隠者はマンドリカルドに洗礼を施し、聖なる剣を授ける。隠者のもとを旅立ったマンドリカルドはある騎士と戦って勝利すると、外衣と馬を交換する。さらに恐ろしい巨人たちと戦う。それからマンドリカルドはパリに向かい、シャルルマーニュとパラディンたちを捕虜にしたロドモンテに挑戦する。
こうして[別のことを]話している間も私は放置したままにしたマンドリカルドのもとへ戻ることを忘れていたわけではない。船を港に導くために[比喩的な表現、「話を無事に終わらせるために」といった意味]私は勇敢な騎士のもとへ戻らなければならない。そうしなければ、まるでマンドリカルドが臆病者であったかのような誤解を生みかねない[もしマンドリカルドが臆病者であれば語る価値がないが、まったくそうではないということ]。そこでここで今の話を中断して、「死の道」まで話が進んだ時に離れたところから続けよう[V-12-2]。
その「死の道」と呼ばれる場所を思い出してほしい。マンドリカルドがいたのはその城だ(そのことについてはすでに話したとおりである)。中庭に入った時、マンドリカルドは強い嘆きを聞いたように思った。しかし、嘆いている者の姿が見当たらなかったのでマンドリカルドは驚いた[V-12-3]。
広場の中央には墓があった。その墓は白い鳩よりも白い一枚の生ける石からできていて、激しい炎が吹き出ていた。そして喇叭のように響く声が告げた。「恐れずに玄室に入らなければ、汝の命は奪われる」[V-12-4]。
「入れ、騎士よ。汝が苦しめられることはない。汝が火に包まれても傷つくことはない。火を熾した者の手ですぐに消されるであろう。もし汝が賢明にも言うとおりにすれば、汝は幸運に恵まれるであろう。そして生まれ変わって世に出た不死鳥のように喜ばしい存在となるだろう」[V-12-5]。
「もし汝が[試練に]挑戦するなら私は汝に真実を告げなければならぬ。汝はここで死ぬかもしれないと。墓所が開いているのが見えるだろう。大きな炎が噴き出しているせいで城はずっと燃えたままで荒廃している。汝は死んでしまうかもしれない。しかし、もし汝が私の告げたことを成し遂げようと望むなら汝はこれまで誰も持ったことがないものを得ることになるだろう」[V-12-6]。
遅疑逡巡していた騎士は、火の中に飛び込まなければならなくなった状況に驚いた。そして、この奇妙な場所に至ることになった運命や宿命を嘆きつつ心の中で言った。「この中で命を落とすかもしれないとはっきりとわかった。しかし、無益に生きるくらいなら死んだほうがましだ」[V-12-7]。
そう言うと、大胆不敵な騎士は墓所に近づき、危険からなんとか脱しようとしている者のようにその中に飛び込んだ。するといかにも不思議なことに、天に達せんばかりに燃え盛っていた火が消えてしまった。あまりに呆気なく消えてしまったので余燼も残らぬほどだった[V-12-8]。
騎士が中に入るとすぐに墓所は大きく開いた。そして墓所は騎士の目の前で地面に沈み込んで姿を消した。結論を言うと、不安と恐怖を感じたタタール人[マンドリカルドのこと、「王」とする版もある]であったが、楽しげな表情を浮かべた美しい乙女を腕に抱いていることにふと気づいた[V-12-9]。
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