ハンティントン伯ロバートの死―第五幕
【白い前掛けをつけたマリアンが登場】
マリアン:マッチはどこ。ジェニーはどこなの。マッチ、あのね。
マッチ:マリアンさま、どうしましたか。
マリアン:薪取りの者が調理人の薪を切らさないようにしているか見てきてほしいのです。ああ、怠け者の娘はいったいどこに。どうしてジェニーはいないの。
ジェニー【舞台奥】:すぐ参ります。
マリアン:花を持って来てください。
マッチ:マリアンさま、すぐに彼女を調理人のもとに送ります。もし調理人が助けを求めたら手伝わせます。
マリアン:急いでそうして、マッチ。ジェニー、ちょっと。
【ジェニーが登場】
マッチ:急げ、急げ。マリアンさまが一生懸命お呼びだから。【マッチが退場】
マリアン:そうね、あなたは私に間違ったことをしたわ。私にこんなに長く叫ばせるなんてね。
ジェニー:食堂と道を香草や花ですぐに綺麗にします。自由民のテーブルに塩を盛り付けて、木の大皿を置いて、パンを準備します。きっとすべて大丈夫です。
マリアン:いえいえ駄目だわ。あなたの飾り袖はピンでとめられていません。それに頭飾りも曲がっています。花をください。みっともないですよ、さあきちんと直していらっしゃい。【ジェニーが退場】
【マリアンが花をばら撒く。サー・ドンカスターと修道院長が登場】
ドンカスター:なかなかマリアンは忙しそうだ。今日は彼女の祝福の日と思っているのだろうか。
修道院長:もし私がうまくやれば、彼女が経験した中でも最悪の日になるだろうよ。
マリアン:あなた方2人はなぜこのようなところへ。傷がまだ治っていませんのに。神がご配慮をたまわらんことを。
修道院長:あなたの親切に感謝します、心優しい乙女よ。わが親族のロバートが我々に手伝うように頼んだのだ。
【修道院長が登場】
修道士:サー・ドンカスター、サー・ドンカスター。
ドンカスター:何か。
修道士:修道院長を見かけませんでしたか。
修道院長:私ならここにいるぞ。いったう何だ、修道士。
修道士:王は追跡で暑くなったのですぐにこちらにいらっしゃいます。王は喉が渇いたと私のご主人さまにおっしゃりました。そこでご主人さまは、あなたが言っていた飲み物をすぐに届けるように求めました。
修道士:さあこちらだ。急ごう。
【ドンカスター、修道士、そして修道士が退場。角笛が吹かれる】
【リチャード王、王太后、ジョン王子、スカーレット、スケーズロック、イーリーの司教、フィッツウォーター、ソールズベリー、チェスターが登場。マリアンが跪いている】
マリアン:優渥なる国王陛下、ようこそいらっしゃいました。陛下とお供の方々を歓迎いたします。
リチャード王:ありがとう、愛らしい女主人。まるでわが家のようだ。ロビン・フッドはどこだ。私に飲み物をくれると約束していたのだが。
マリアン:あなたのしもべであるロビンはまもなく参ります。修道士がロビンの叔父のもとへ走って行きました。ロビンの叔父はサー・ドンカスターとともにここに控えています。全員が一緒に飲み物を準備しています。
リチャード王:そうか、間が悪かったようだな。私は暑くて喉がとても渇いている。
【盃と手拭いを持ったロビン・フッドがドンカスターとともに登場。タックとマッチが修道院長を引きずって来る】
ロビン:反逆者め。おまえを王の御前に引きずり出してやる。
修道士:さあ来い、殺人者の修道院長。
マッチ:さあこっちだ、犬畜生め。
リチャード王:いったいどうしたのだ、ロビン。おまえが持って来るはずの飲み物はどこだ。
ロビン:こちらにございます。ただ陛下にご賞味していただこうとこの2人が準備した飲み物を差し上げることは決してできません。
リチャード王:さてどういうことだ、ロビン。手短に私に答えよ。私はおまえの困惑した表情に驚いているのだ。
ロビン:私の見苦しい表情で陛下をずっと煩わせるつもりはありません。私がまたお目にかかることはもうすぐなくなるでしょう。
マリアン:お目にかかることはもうないとは。そんなことになったらずっと夜のようだわ。もしあなたがまた姿を見せてくれなければ、太陽が決して昇らないようなものです。私のロビン、体調が悪いのですか。なぜそのようにふらついているのですか。
ロビン:立っていられそうにないからだ。今はかろうじて立っているが。わが王に感謝します。そしてマリアンにも感謝する。
リチャード王:ロビン、いったい何が起きたのか手短に我々に話してくれ。
ロビン:手短に話さなければなりませんね。私には死が迫っているからです。長い話であれば、半分も話し終わらないでしょう。
フィッツウォーター:私の息子が死ぬだと。私のあらゆる喜びのもとである輝く太陽が。死は徳のある命にはきっと効き目がない。
ロビン:徳には効き目がありませんが、命には効き目があります。
リチャード王:おまえが死について話すのはどういうことだ。どのようにしておまえは死ぬというのだ。
ロビン:毒によって。そして修道院長の裏切りによって。
王太后:私が持っている霊薬の粉を飲みなさい。さあ飲みなさい。毒の力があっても生きられます。
ドンカスター:私が奴の死を早めてやったのだ。霊薬の粉とおっしゃいましたか。もし鹿角精[雄鹿の角から採った炭酸アンモニウムで気付け薬として用いられた]や胃石[羊などの体内の結石、解毒作用があると信じられていた]の欠片や他の解毒剤で私の会心の作である調合物の効果が止められるなら、私は愚か者です。美しい王太后さま、あなたが恩知らずの花婿のために骨折っても徒労に終わりますよ。私があなたの敵に対してあなたの恨みを晴らしてあげたのです。たとえ全世界が否と言っても、ロビンは死ぬでしょう。
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