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アメリカ人の物語4 建国の父 ジョージ・ワシントン(上) 連載29号

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※憲法制定会議の始まりから読む場合は連載12号

熟慮の府

下院議員の選出方法に加えて上院議員の選出方法についても議論されている。そうした議論は五月三一日から始まった。ヴァージニア案では、上院議員は邦議会によって指名され連邦下院によって選出されることになっている。まずノース・カロライナ代表のリチャード・スペイトは邦議会によって上院議員を選出する方式を提案した。ヴァージニア案に関する質疑応答の中でランドルフは上院の役割について存念を述べた。

「合衆国が苦悶している悪弊に対して解決策をもたらすことが重要な目的です。こうした悪弊の源を探ると、誰もが民主主義の騒乱と愚挙にたどり着くでしょう。したがって、我々の政府のそうした傾向に対する何らかの抑制が必要です。優れた上院はそうした目的に最も適っています」

次にマサチューセッツ代表のルーファス・キングが邦議会による選出の欠点について指摘する。

「スペイト氏が提案したように上院議員を邦議会に選出させる場合、その数を非常に多くしなければ諸邦間で議席を[人口にもとづいて]比例配分できません。もし比例配分が採用され上院でデラウェアに一議席与えようとすれば、上院議員全体の数は八〇人から一〇〇人にしなければなりません」

キングの発言はランドルフの論を補強している。すなわち、ランドルフが言うように上院は熟慮の府であり、人数が多ければ議論が容易にまとまらず、少人数でじっくり検討するという本来の役割を果たせなくなる。キングの意見を認めたスペイトは提案を自ら撤回した。さらにウィルソンによって人民による上院議員の選出が提案され、賛否両論が戦わされたが結論は出なかった。


六月七日、デラウェア代表のジョン・ディキンソンは邦議会によって上院議員を選出する方式を再び提案した。シャーマンがディキンソンの意見に賛意を表する。

「上院議員を選出できるようになれば、諸邦政府は連邦政府を支持することに関心を抱くようになるでしょう。そして、二つの政府間で適切な調和が維持されるでしょう。両者は明確に区分された管轄領域を持つべきですが、互いに支持し合うことで相互に利益をもたらします」

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