第37章 シャルル=アンリ・サンソンの日記
芽月5日[3月25日]
昨日、どの顔にも祭りの様相が浮かんでいた。今日もそんな感じが続いている。市民ロベスピエールと市民ダントンが和解したという噂が広まっている。ロベスピエールは、和解の証としてエベールとその一派の処刑を要求したという。その一方、ダントンは王党派の大物の陰謀者、すなわち背任で告発された議員たち、風月28日[3月18日]に逮捕されたショーメットとシモンの首を要求した。しかし、そうした処刑の後、裁判所に公正であることを求める命令が下されるという。こうしたことが原因の一つになって、昨日、執行された死刑で[革命]広場にあれだけ多くの群衆が集まったというわけだ。前日に安心していた者が今朝になって戦々恐々としている。そして噂も不吉なものになっていた。噂によれば、ロベスピエールはダントンに歩み寄ろうとはさらさら思っておらず、ダントン自身に確実に打撃を与えるためにダントンの敵を攻撃しているだけであり、たとえ思うままに打撃を与えるにしても、公正さを保っているのだという姿勢を示そうとしているという。わが国の民主主義は専制と酷似していた、権力を行使する者は分かち合うために権力を手放すことなどできないというのが実情だ。今日、陪審員の1人のルノーダンはセリエに向かって「ロベスピエールの後に続こうとするなら、ダントンの首一つは余分だから取り除かなければならない」と言った。危険にさらされているとダントンは警告されたと言えるだろう。セリエは「奴らはそんなことはできないだろう。私が聖なる約櫃のようなものなのだから。もしロベスピエールがそんなことを考えているとすれば、私は奴のはらわたを食べてやろう」と答えた。私はセリエが勘違いしていると思う。今や聖なる約櫃はたった一つしかない。それはすなわちギロチンである。護民官であれ王であれ人民の本当の気持ちを知ることはとても難しいことだ。人民は偉大なる破壊者を賞賛するが、そうした賞賛は激しい恐怖のようなものだ。人民が愛するのは、人民の目や心に訴えかけるものを建設する者であり、そうした者に対して人民は身を捧げようとするものだ。ダントンはただの人間として話したり行動したりするが、ロベスピエールはまさに預言者である。帝国は常に預言者たちのものだ。マラーの心臓を短剣が貫いたせいでこの腐りきった外道が崇拝されるようになってしまった。青い服を着た男[ロベスピエールのこと]は今も生きていて、崇拝者に囲まれている。私の第一の助手であるデモレの妻は、善良なる神の代わりにロベスピエールの肖像画をベッドの脇に置いて、その前で朝に夕に祈りを唱えている。彼女と同じようなことをしている者がここに多くいる。いかに裁判所がその責務を熱心に遂行しても、監獄は満員である。処刑台に空きができても、パリで逮捕された罪人や地方に出向した議員たちが送りつけてくる陰謀者ですぐに埋められてしまう。本日、我々は、反革命的な発言で有罪になった3人のアリエ県[フランス中部にある県]出身者を処刑した。そのうち2人は兄弟であり、もう1人は兄弟の片方の息子であった[仏文原注:入市物品審査官のヴィシーのジャック・ルガーヌ、旧サン=ルイ騎士のジャン・ルガーヌ・デバロディーヌ、そして無職のピエール・ルガーヌ・ド・ベルバール]。
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