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『ロラン夫人回顧録』第一部⑦

 こうした信仰における変化は私に驚くべき変化をもたらした。私はとても謙譲になり、言い表せないほど内省的になった。私は男を一種の恐怖をもって見るようになった。誰か男が親切だと思える時にそうした恐怖が増した。私は自分の考えについて良心の呵責にとらわれるようになった。たとえ支離滅裂なものであっても、神を冒涜するような考えが少しでも心に浮かぶと、私はそれが罪であるかのように思えた。私は自制の日々を送ったが、16才でビュフォンの『博物誌[18世紀フランスの博物学者ビュフォンの代表的な著作、全44巻(1749~1804)で地球の歴史や生命の発生に始まり、動物、鳥類、鉱物などについて記述している]』を読んだ時にもはや敬虔な者ではなくなった。人間[の生殖[CP注:ボスクは括弧部分の言葉を省略している]]について扱った部分を私は読まずに飛ばして、まるで断崖を覗いて震えている者のように関連する図版を急いで通り過ぎた。私は25才になるまで結婚しなかった[CP注:最初、ロラン夫人は「26才」と書いていた。ロラン夫人が結婚したのは1780年2月4日であり、26才になる6週間前であった]。思い込みが激しく感受性が鋭いうえにさまざまな教育を受けていたので、端緒から早熟な知識を増やすことを避けていたせいで、結婚の初夜は私にとって驚きべきものであるだけではなく幻滅するものだった[CP注:ボスクはこの文章の表現を穏当に改めている]。

 【苦痛に満ちた私の打ち明け話を受け止める一方、母は少年を愛しているかどうか、他の者たちを見た時よりも彼を見た時に喜びを感じるかどうか私に聞いた[CP注:ボスクは以下の括弧内の文章を掲載していない]。「とんでもないわ。私は彼がいるかと思うとテーブルに行くのが嫌になるの」。「彼に会わずにすむならあなたは幸せなのね」。「もちろんそうよ」。

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