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翻訳『恋するオルランド』3巻第3歌

※『恋するオルランド』の中でマンドリカルドが登場する部分を抜粋してイタリア語原文から翻訳。

あらすじ

 恐ろしい鰐がオリロの塔から姿を現し、グリフォーネが槍を突き刺そうとするが粉々に砕ける。続いてアクィランテが剣で鰐を攻撃するがまったく通用しない。そこでグリフォンは鰐の口を掴んで抑える。その間、アクィランテはオリロの腕を切り落としてナイル川に投げ込む。オリロはナイル川に自ら飛び込む。それからアクィランテはグリフォンの助太刀に駆けつけて鰐の喉に槍を突き通す。こうして恐ろしい鰐は退治された。そこへ腕を取り戻したオリロが姿を現す。戦いが再び始まるが、魔法の力で守られたオリロを前にグリフォーネとアクィランテは苦戦する。ここで場面は変わり、海岸にたどり着いたマンドリカルドとグラダッソは、裸で岩に縛り付けられた若い娘を見つける。2人は娘から事情を聞き取る。娘はルチーナという名前のキプロスの王女であった。ルチーナによれば、すぐ近くの洞窟に怪物が眠っていて、誰かが自分を救出しようとすると襲いかかるという。ルチーナは恋人に自分の死を告げてくれるだけで満足だと2人に言う。マンドリカルドは王女の警告に耳を貸さず鎖を断ち切る。すぐに怪物が洞窟から姿を現す。グラダッソは虜になって鎖で縛られる。続いて怪物はマンドリカルドを追跡するが、亀裂に気づかず落下する。怪物を振り切ったマンドリカルドはルチーナとグラダッソを解放する。3人はキプロス王の船を見つけて拾われる。そこへ怪物が再び姿を現して船を沈めようとする。すると嵐が起こって船は遥か彼方へ運ばれて行く。

22節~60節

 これまでのようにまたこの場面に戻って詳しく説明することになるだろう。一つのことで紙幅がいっぱいになるので、別の場面に紙幅を割かなければならない。グラダッソとともにフランスに向けて旅立ったマンドリカルドについて語ろう。ただフランスに到着するまで2人にはしなければならないことが海にも陸にもたくさんある[III-3-22]。

 2人は、ヘクトルの武具が収蔵されていた仙女の城を出発してシリアとダマスカスを通り過ぎた。その美しい地では何も苦難に遭わなかった。海沿いの宿に到着した頃には時刻が遅くなっていたので2人はそこに留まろうとした。しかし、宿は開けっ放しで誰も住んでいない様子であり、どこにも人の姿がなかった[III-3-23]。

 グラダッソ王は浜辺を見下ろした。石でごつごつした険しい崖があった。崖の下の海の波[Rossによれば、l’onde e il mareは二詞一意、すなわち二つの名詞または形容詞をeで結んで一つの意味を表す表現法だという]が打ち寄せるところに岩があり、乱れ髪の裸の女が鎖で縛り付けられていた[ ペルセウスがエチオペアの王女アンドロメダを救う伝説を参考にしていると考えられる。]。女は絶望に駆られて死を乞うていた。女は「死を。お願いですから私に死を。私はすべての希望を失いました」と言った[III-3-24]。

 騎士たちはその女のひどい状況を確認して責めを負うべき者が誰かを知ろうと、その大きな崖の下にすぐに降りて行った。女は石をも動かさんばかりに激しく嘆き悲しんで騎士たちに言った。「お願いですから私を剣でずたずたに切り裂いてください」[III-3-25]。

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