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アメリカ人の物語4 建国の父 ジョージ・ワシントン(上) 連載13号

連載1号から読む

連載12号から時期が飛んでワシントンの大統領就任の話になっています。憲法制定会議に関するまとめが難航しているのでいったん離れることにしました。ご了解下さい。

第4章 政権発足

物語の舞台

新憲法が成立してアメリカは国家として第二の創生を歩み始める。マウント・ヴァーノンに一人の使者がやって来る。その使者は、ワシントンの大統領当選を告げた。輿望を一身に担うワシントンは、とまどいつつも大統領として新政府を導く決意を固める。

史上初の大統領就任式がニュー・ヨークでおこなわれる。人々の祝福の中、新大統領が誕生する。新大統領は、参考にすべき先例もなく、国家を主導する体制を少しずつ整える。


天上の威命

一七八八年六月九日、マウント・ヴァーノンにボルティモアの市民の代表たちがやって来た。彼らは手土産を持っていた。「フェデラリスト号」と名づけたミニチュアの船だ。憲法成立を祝う記念品である。

個人秘書のデイヴィッド・ハンフリーズはワシントンから相談を受ける。贈り物を受け取るべきか否か。もし贈り物を受け取れば、大統領気取りでいると批判されるのではないかと恐れたからだ。しかし、市民たちの厚意を無碍にすることもできない。結局、ワシントンは贈り物を納める。ハンフリーズによれば、「大統領職を引き受けるか辞退するかという問題について最初に誰かと会話する機会になった。[中略]。それから数ヶ月間、同じ話題が会話に上らない日はほとんどなかった」という。そうした会話の中でハンフリーズは、ワシントンが大統領職を引き受けるつもりがないことを悟る。そこで面を冒して諫言する。

「あなたが大統領職を辞退すれば、政府を支持する人びとに大きな衝撃を与えることになり、政府の敵を利することになります。そうなると政府は完全に転覆してしまうかもしれません」

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