アメリカ人の物語4 建国の父 ジョージ・ワシントン(上) 連載30号
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連邦政府の権限
五月三一日、連邦議員の選出方法に関する議論が終わった後、連邦議会の権限に関する議論が始まった。まず上下両院に法案の発議権を与えることが全会一致で可決された。それから争点となったのは、連邦議会の権限が及ぶ範囲である。ヴァージニア案では、諸邦政府が権能を持つ範囲を除いてすべての領域に及ぶ立法権を連邦議会に与えると謳われている。まずラトレッジが口火を切る。
「権能を持たないという言葉の曖昧さに反対します。その定義によって包含される権限が正確に列挙されて明確にされない限り、投票で決定できません」
ラトレッジの発言を引き取ってバトラーが続けて意見を述べる。
「諸邦からあまりに多くの権限を取り上げようとしているのではないでしょうか。この点についてランドルフ氏の意見を確認したいと思います」
指名されたランドルフは立ち上がって答える。
「連邦議会に無制限の権限を与える意図はありません。諸邦の管轄領域への侵害に絶対に反対します。たとえどのようなことがあろうとも、そのようなことは絶対に考えていません」
しばらく議論が続いた後、諸邦政府が権能を持つ範囲を除いてすべての領域に及ぶ立法権を連邦議会に与えるという規定は可決された。次に議論の的になったのは、連邦が不従順な邦に対して強制力を行使することを認めた規定である。まずシャーマンが反対論を唱えた。
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