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第34章 ロラン夫人とバイイ

 霜月17日[11月7日]、石工のレネ・リドー、指物師のジャン・クレン、樽職人のジュリアン・ケリュー、靴職人のジャン・ティニエール、労働者のフロラン・オリヴィエ、そして労働者のトマ・エリーの6人の処刑が執行された。6人は全員[レ・]ポン=ド=セ[フランス北西部にある町]の町議会議員であり、ヴァンデ県の反乱者[1793年から1796年にかけてフランス西部にあるヴァンデ県で大規模な農民反乱が起きた]と共謀した嫌疑で有罪となった。

 こうした不幸な男の後に立派な犠牲者たちがすぐに続いた。5月31日に逮捕された後、ロラン夫人は霜月18日[11月8日]に最初の尋問を受け、それから18日に革命裁判所の前に引き出された。

 ロラン夫人はジロンド派の中心人物であった。高邁な品性、気品ある機知、卓越した見解によって彼女は、夫だけではなくサロンに集まった立派な男たちに大きな影響力を及ぼした。こうした女による政治に対する干渉は、新聞や国民公会で強い怒りを引き起こした。ロラン夫人の辛辣な言辞、野心的な凡人に対する至極もっともな侮蔑のせいで敵がさらに増えてより多くの憎悪を向けられることになった。彼女が[ジロンド派とともに]凋落したのを見た敵は、彼女の優れた性質が気に障るようになった。寛容な者たちの中でも最も人情深い者でさえ情け容赦がなかった。

 糾弾は、ほぼすべてが主に彼女とジロンド派とのつながりに基づいていた。ロラン夫人は運命を甘受したが、友人である男たちに加えられた侮辱を聞いて怒りに身震いしながら擁護しようとした。

 「なんという時代に、そしてなんという人びとの中で我々は生きているのでしょうか」と彼女は叫んだ。「友人が互いに敬意と誠意を抱くことが犯罪と見なされてしまうとは。あなた方が処断した男たちについて評価するのは私の仕事ではないかもしれません。しかし、彼らが悪意を決して持っていなかったと私は信じています。というのは彼らは祖国に対して愛国心、誠意そして献身を強く示していたからです。もし彼らが間違いを犯していたならば、そうした間違いは美徳によるものです。彼らは間違いを犯したかもしれませんが、不名誉な扱いを受けるべきではありません。私の目からすれば、彼らは不運な人びとであり罪なき者たちなのです。もし彼らの安寧を願うことが罪であれば、私は私が罪人であること、そして彼らの敵によって迫害される栄誉を分かち合うことを喜びとすることを世界の前で宣言しましょう。祖国に対して陰謀を企んだとして告発された優れた男たちのことを私はよく知っています。彼らは熱烈な共和主義者でしたが人道的な共和主義者でもありました。共和政体を信頼できない者たちが共和政体を大切に思うようにするためには良き法が必要であると彼らは信じていました。それは共和政体を信頼できない者たちを殺すことよりも難しい仕事なのです」

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