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翻訳『狂えるオルランド』第30歌

※『狂えるオルランド』の中でマンドリカルドが登場する部分を抜粋してイタリア語原文から翻訳。

あらすじ

狂乱したオルランドは海に浮かぶ船を見つけて乗り込もうと馬で追う。途中で馬が力尽き、オルランドはそのままジブラルタル海峡を泳ぎ渡ってアフリカの海岸に着く。アンジェリカが故国に帰ったことが語られる。その一方、アグラマンテはルッジェーロとグラダッソのどちらが先にマンドリカルドと勝負するべきか判断を下せなかった。ルッジェーロもグラダッソも互いに譲らず、籤でマンドリカルドの相手が決められることになった。籤の結果、ルッジェーロとマンドリカルドの決闘が始まる。マンドリカルドはルッジェーロに深傷を負わせたものの命を落とす。ルッジェーロがヘクトルの武具とブリリアドーロを手に入れ、グラダッソはドゥーリンダナを手に入れた。その一方、ブラダマンテはルッジェーロからの手紙を受け取って喜んだが、ルッジェーロがマルフィーザとともにいたことを知って不安を覚える。嫉妬に悩みつつもブラダマンテはモントーバンの城で言われたとおりに恋人を待つ。モントーバンの城に帰ってきたリナルドは家族と再会を喜び合った後、シャルルマーニュを救いに出発する。

17連~75連

ほかにも多くのことを語りたいので一つのことばかり追うわけにはいかない。それでは私にとって興味深い話に移るとしよう。タタール人[マンドリカルドのこと]は恋敵を押しのけて美女[ドラリーチェのこと]を心行くまで堪能しようとしていた。アンジェリカが去り、貞節なイザベラが昇天した後、全ヨーロッパを探してもその美女に匹敵する者はいない[30-17]。

美女が好意を示してくれた裁定のおかげで得意満面であったマンドリカルドであったが、その愉楽の果実をまだ十分に味わえていない。というのは彼に対してほかの諍いがまだ残っていたからだ。一つの諍いは、若きルッジェーロが白い鷲[の紋章]について譲れぬと彼に対して起こした諍いである。もう一つの諍いは、ドゥーリンダナの剣を彼に対して要求する名高きセリカーナの王が起こした諍いである[30-18]。

アグラマンテは苦心惨憺したものの解決できず、アグラマンテとともにいたマルシリオもこうしたいざこざを収める術を知らなかった。互いに仲良くするように彼らに命じることもできず、マンドリカルドがそれぞれの諍いに決着をつけられるように、古のトロイ人の紋章をマンドリカルドに委ねるようにルッジェーロに承服させることも、マンドリカルドに剣を使わせるようにグラダッソに承服させることもできなかった[この連の後半はUTET版の注釈を参考に訳出した][30-19]。

ルッジェーロは、マンドリカルドが自分の紋章を帯びてほかの戦いに赴くことを望まなかった。またグラダッソも誉れ高きオルランドがかつて佩いていた剣を自分以外の者に対して使わせたくなかった。アグラマンテは言った。「ではどちらに籤が当たるのか見届けることにしよう。それ以上はもう何も言ってはならぬ。運命の女神が命じることを見届けて、運命の女神が定めたようにしよう[UTET版の注釈によれば、マンドリカルドと戦う者を籤で決めるということ]」[30-20]。

「もし汝らが私を喜ばせたいと願うだけではなく、さらに私が汝らに対してずっと恩義を感じるようにしたければ、汝らのうちどちらが戦うべきか[決めるために]籤を引くがよい。ただ先に籤を引き当てた者が両者の諍いを一手に引き受けると同意しなければならぬ。したがって、もしその者が勝てば、自身の勝利になるだけではなく同胞の勝利になる。もし汝らの一方が負ければ、一方の敗北は両者の敗北となる」[30-21]。

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