ビリー・ザ・キッドの生涯―第九章 ダッドリーの命を狙うキッド
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リンカンで開かれた裁判でターナーとその一団が無罪放免された後、キッドは友人からこの地方を離れるほうがよいという忠告を受けた。彼はしぶしぶながら同意したが、無法者でいることを決して諦めないつもりであることは明らかだった。
ビリーは「俺が離れる前に殺したいと思う悪党が1人いる」とかつての雇い主であるジョン・チザムに言った。
牧牛王は「いったい誰のことだ」と聞いた。
「ダッドリー中佐だ。奴はフォート・スタントンから鉱夫の兵士たちを連れてきて俺を捕まえようとしたからな」
「そんなふうに思うのは止めておけ、ビリー。すぐに立ち去るんだ。また流血騒ぎが起きたら私とウォレス長官の力を使ってもおまえの首を救えないぞ」
キッドはむっつりと黙ったまま頭を垂れていて、しばらくそうしていた。それから何も答えずに立ち上がって去った。
殺人者にして無法者が去ると、チザム老は「あの赤い悪魔は生まれつきの殺人者だ」と言った。
チザムの心の中には元から備わっている善良さがないので、ダッドリー中佐の命を救いたかったわけではない。老いぼれた悪党はキッドの悪魔の所業の多くに関与していたので、小さな悪魔がまた何か不法行為に手を染めれば、誠実な者たちが立ち上がって自分を除外しようとするのではないかと恐れ始めた。
マクスウィーン邸で無法者たちの捕縛に協力したせいでウォレス長官によって逮捕されたダッドリー中佐は、フォート・スタントンで裁判を受けていた。軍事法廷、もしくは軍人予審裁判所が彼の嫌疑を調査した。
元ミズーリ州の住民でありニュー・メキシコの現住民であるアイラ・E・レオナード判事は、マクスウィーン夫人に雇われて、その夫の殺害と邸宅への放火の共犯者としてダッドリー中佐を告発していた。ラス・ベガスに住んでいた頃、レオナード判事は、ラス・ベガスの警察署長であるジョン・マクファーソンとともにフォート・スタントンに行った。
マクファーソンは[南北]戦争中、クアントリル[訳注: 南北戦争時の南軍のゲリラ指導者、ミズーリ州とカンザス州を中心に郵便馬車を襲撃したり北軍側の村や農家を攻撃した]とともに戦い、彼自身が無法者であった。彼は後にラス・ベガスの荒くれ者たちの誰かに殺害された。
ダッドリーの裁判が開かれている間のある夜、彼とレオナードは部屋に座って有罪判決が出るかどうか話していた。すると窓を叩く者がいた。
レオナード判事は少し苛立ちながら「いったい何だ」と言った。
マクファーソンは「わからないな。俺が雨戸を開けてちょっと見てこよう」と言った。
怯えた弁護士は「いやそんなことはしなくていい。もし武装した無法者が外にいたら我々は撃たれてしまう」と言った。
ダッドリー中佐の裁判中、判事は無法者たちが命を奪いに来るのではないかと絶えず怯えて暮らしていた。
マクファーソンは、西部でよく使われる言葉だが、まさに「勝手知ったる」であり、そのような恐怖を持ち合わせていなかった。
彼は「まあまあ、判事さん。自分の影に怯えたりするなよ」と言って立ち上がって雨戸を開けた。
ビリーザキッドの小さな体が部屋にすばやく飛び込んできた。
弁護士は「やあ、ビリー。君か」とほっとした様子で言った。
少年は「そうだ」と悪魔のような微笑みを浮かべながら答えた。そうした微笑みは、彼が殺人を意図した時にいつも現れるものであった。
マクファーソンは「なぜここに来たんだ、ビリー」と聞いた。
彼は「この裁判を終わらせに来たのさ」と言った。若者は腰の周りにベルトを巻いていた。そのベルトは文字通りナイフとリボルバーでいっぱいであった。
マクファーソンは「ではダッドリーを」と聞いた。
「そうだ」
「どうやって」
「俺は悪党を殺しに来た」
弁護士は「おお、ビリー。そんなことは考えるな」と言った。
「でも俺はそうしたい。俺は奴を撃ちたい。奴はどの部屋にいる」
この時、ダッドリーは廊下の向こうにある部屋にいて、弁護団と相談していた。ビリーが脅迫を実行しようとすれば危険が伴う。
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