第10章 大逆罪のダミアン
ある夜、ヴェルサイユ宮殿でルイ15世は王太子と廷臣を引き連れて夫人たちが住む区画に向かった。ルイ15世は、馬車が待つ宮殿の入り口に至る一続きの階段を下っていた。厳しい寒さだった。誰もが震えていた。寒がりの王は外套を重ね着していて、1枚は毛皮の裏地がついていた。王が馬車に乗り込もうとしたところ、1人の男が衛兵たちの間をすり抜けて王太子とダヤン公爵を押しのけて襲いかかってきた。王は「誰かが私に恐ろしい一撃を与えた」と叫んだ。
王を一目でも見ようと殺到した群衆のせいで混乱が起きた。混乱の中、衛兵たちが群衆を制止したので、いったい何が起きたのか気づいた者は誰もいなかった。しかしながら、部外者だと思われた1人の従僕が王の肩に手をかけると、2人のほかの従僕の協力を得て男に立ち向かって捕縛した。
王は胴着の下に 手を入れると負傷していることに気づいた。同時に王は向き直ると、襲撃者を見て「奴だ。奴を逮捕しろ。ただ傷つけないようにせよ」と叫んだ。 それから王はド・ブリエンヌ氏とド・リシュリュー氏に支えられて自分の区画に戻った。
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