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第36章 シャルル=アンリ・サンソンの日記

雨月17日[2月5日]

 本日、我々は高貴な旧貴族の女たちを処刑したが、彼女たちは市民モンジュルダンが示した態度に優るとも劣らない冷静さを示した。すなわち、亡命した息子に送金した罪で有罪になった旧ラスティニャック侯爵の未亡人のマリー=ガブリエル・ルシャ、食料を独占したことで有罪になった旧マルブフ侯爵夫人(アンリエット=フランソワーズ=ミシェル)、彼女たちとともにマルブフ夫人の小作人で共犯者のジャン=ジョゼフ・ペイヤン、さらにアシニア紙幣を偽造したニコラ・アルマンとジャン・ルノーの2人[が処刑された]。道中、マルブフ夫人は 、勇敢に死に臨むようにペイヤンを励ましながら言った。
「哀れな男よ、結局、今日死んでも20年後に死のうとまったく同じことですよ」
 彼女のような覚悟を持てなかった男は答えた。
「奥さま、もしまったく同じことなら、20年後に死んだほうがましです」

雨月19日[2月7日]

 本日、敵と通謀して内戦によって国家を混乱させようとする陰謀を企てたことで有罪になったロラゲ伯爵の離縁した妻のエリザベート=ポリーヌ・ガン、ロラゲ夫人の執事のピエール=ルイ・ピエール、聖職者民事化法推進派のメニル[フランス北東部にある町]の主任司祭のピエール=ジョゼフ・プティ、そして、8月10日の陰謀の共謀者として元国王の妹のエリザベートの元侍従のニコラ・パスカンが処刑された。

雨月20日[2月8日]

 本日、処刑されたのは、陰謀を企てたジャン=ジャック・ド・トゥルスボワ准将、旧貴族でラングドック連隊の騎兵中隊長のジャン=セザール・マルシャル・ド・シェルヴィル、旧貴族のルイーズ=マドレーヌ・デコンボ、法で認められているのにもかかわらず、ある聖職者が結婚するのを思いとどまらせたことで有罪になった聖職者民事化法推進派のシャンヴァン教区の主任司祭のクロード=フランソワ・クルコである。

雨月22日[2月10日]

 クートンはリヨンでさらに馬鹿騒ぎを起こした。彼は声高に脅しをかけたが、脅しで誰かが殺されたわけではない。彼はせいぜい何軒かの家を破壊することしかできない。市民コローと市民フーシェが彼に取って代わって以来、事態は一変した。新聞は解放された街の罪人たちの名前で溢れ返った。コローはギロチンを撤去してしまった。思うよりもギロチンが能率的ではなかったからだ。そこで彼は大砲による処刑を採用して、1日に200人以上を殺した。彼は「おまえたちの野次よりもでかい音が出るぞ」と言ったそうだ。ロベスピエールとクートンはそうした虐殺に憤慨したが、実際のところ、まったく無言の怒りでしかなかった。国民公会が共和国を統治している。そして国民公会は血に飢えた少数の指導者たちによって支配されている。さらにそうした指導者たちは、彼らの支持母体であるコルドリエ・クラブに服従している。したがって、コルドリエ・クラブの大立者であるエベールは、自分こそ主権者である人民の上に立つ真の主権者であると言ってもおかしくないわけだ。それはとても嘆かわしいことだ。昨日、革命裁判所が判決を下したので、今日、我々は、連邦主義者の陰謀に加担したことで有罪になった35歳のコート=ドール県[フランス中東部にある県]の行政官のフィアクル・ルーイェ、共謀者になった元修道女のマリー=アデライド・フルベール、以下全員の狂信者にして共謀者、すなわちカルメル会の元修道女のアンヌ・ドゥノンとヴィクトワール・クルヴェル、聖母訪問会の元修道女のテレーズ=エレーヌ=ジュリエンヌ・シュネ、カルメル会の元修道女のマリー=エリザベート・カルヴォワザン、クララ会の元修道女のマリー=ルイーズ=フィリピーヌ・ラニエを処刑した。檻車の中で男は市民ルーイェだけであり、群衆は今朝出されたばかりの布告で6人の女の素性を知っていたので、通りや広場でたくさんの野次が飛んだ。ギロチンを取り巻く者たちはあらゆる種類の冷やかしを浴びせたが、時にはその中に卑猥なものもあった。彼はそうした冷やかしをまったく聞いていないかのようだった。女たちは祈り、彼はまるで何かを探しているかのように空を見上げていた。

雨月23日[2月11日]

 亡命貴族と通謀したことで有罪になった旧ヴァクサンス男爵夫人のアンヌ=アンリエット・ブーシュヴァン、裏切り者のデュムーリエによる自由を粉砕する陰謀を助長するような上申書を提出してその共謀者となったことで有罪になったサオーヌ・エ・ロワール第5大隊中佐のフランソワ=アマブール・シャピュイを処刑した。

雨月24日[2月12日]

 陰謀を企てたアルデーシュ県[フランス南部にある県]当局の書記官のジャック=アレクシス・メゾヌーヴ、反革命的な意見を表明したことで有罪になったブルボン連隊の元隊長のクロード=ヴァランタン・ミラン=ラブロース、徴兵妨害を目的とした策略を企てたことで有罪になった農夫のジャック=フィリップ=イザーク・ルヴェソー、通称ゴーが革命裁判所による判決を受けて今日、処刑された。

雨月26日[2月14日]

 昨日、朝の法廷で5人が審判にかけられた。審判が続く間、法廷の陪審員のヴィラトが裁判上のデュマに「被告人は二重に有罪です。もう私の食事の時間だというのに、この瞬間も彼らは私の胃袋に対して陰謀を企てているからです」と言った。 裁判所の食堂でこの言葉を繰り返したのはデュマであった。笑う者もいたが、ヴィラトの同僚であるノランとセリエは、その恥ずべき言葉について遠慮することなく存念を述べた。上述の者たちは有罪になって本日、処刑された。

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