ルサージュ『恋するオルランド』第6部10章
皇帝マンドリカルドの栄光ある冒険について。
マンドリカルドがアストラハン王国とチルカッシア王国にもたらした惨害はすでに語ったとおりである。さらにマンドリカルドは父のアグリカーネの死のためにカタイに復讐しようと大規模な準備を進めていた。この若き王は早く計画を実行しようと気が急くあまりに、その軍勢の多さにもかかわらず誰も予想できないような速さで軍備を推し進めて出発した。軍勢は20リウ[1リウは約4キロメートル、20リウは約80キロメートルに相当する。軍勢の長さについて言及していると考えられる]もの地を占めた。この強大な軍隊にはまったく歯が立たないと観念した近隣の諸王は自由に通行する権利を与えた。
動乱が迫りつつあると警告を受けたガラフローネは、敵に降参してその身を委ねることに決めた。ガラフローネの娘[アンジェリカのこと]、[オルランド]伯、そしてブラディマルテが去ったことでガラフローネはすっかり気落ちしていた。マンドリカルドが急いで進軍したせいで、グラダッソの救援に期待していたガラフローネの望みは絶たれた。カタイの年老いた王はへりくだった様子もおごった様子も見せずにタタールの新しい皇帝の前に出た。ガラフローネは言った。「皇帝よ。あなたの敵ではない王にどうしてこのような強大な力を振るう必要があるのか」。マンドリカルドは答えた。「私はおまえが憎むべき王にしか見えないのだ。わが父のアグリカーネはアルブラッカの城壁の前で命を落としたのではないのか」。ガラフローネは答えた。「強大なる皇帝よ、たとえ勇敢なアグリカーネがこの国で最期を遂げたとしても、それは本人に降りかかった凶運によるものだ。どうしてアグリカーネは何も罪がない者たちの家々を襲撃しに来たのか。天が無辜の者たちを守り給うたのだ。さらに天は、勇猛なアグリカーネを倒せる勇気を持つ戦士をはるか西から遣わしたのだ。もし偉大なる皇帝の復讐を遂げることが血族の責務としてあなたに課されているのあれば、無辜の者たちではなく皇帝を殺した者だけに復讐することがあなたにとって名誉になるだろう」。マンドリカルドは怒りを燃え立たせながら叫んだ。「ああ、私が探し求めているのはその戦士だ。無辜の者たちではなくその戦士に私の憤怒をぶつけたい。私は無辜の者たちの血で偃月刀を染めたことを恥ずかしく思う」
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