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ビリー・ザ・キッドの生涯―第一一章 逮捕と逃亡

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ビリー・ザ・キッドの最近の残虐行為は、彼がこれまでに犯したすべての殺人以上に人々を敵に回した。リンカン郡保安官補佐のパット・ギャレットは、無法者たちと対抗する一団を組織した。無法者たちは、娘のネッティを取り戻そうと決意したシルバー・シティのジョーンズの下の市民の一団に追跡されていた。

盗賊たちは激しく追跡されたので、ネッティは逃れることができ、2日間、森と平原をさまよって、飢えで半狂乱になりながら父親の一団によって発見された。彼女は家に連れ戻されたが熱病に罹っていて、風雨にさらされていたうえに治療が間に合わなかったせいで数週間後に亡くなった。小さな谷底に無法者たちがキャンプしているのを知ったパット・ギャレットはある夜、彼らのもとに下りて行った。

彼の一団は激しく怒っていて、恐ろしい一斉射撃を浴びせた。そのせいで無法者たちの半分が死んだ。トム・オフォラー[ド]は殺害された者たちの中にいて、ビリー・ザ・キッドは捕虜になった。

ギャレットは「おまえは悪名高い暗黒の魂を持つ殺人者だ。おまえの悪魔の所業のつけを払うことになる」と言って捕虜に枷を嵌めた。

キッドは「怖くないね。誰が俺を傷つけようとするんだ。俺にはニュー・メキシコにたくさんの友達がいる。彼らは俺を死なせようとしないだろう。俺たちは逃げてみせる」と言った。

逮捕されたキッドは、最近戦ったばかりのチザムやその他の者たちに助けを求めた。しかし、若き殺人者は自分が全員に見捨てられたとすぐに悟った。夢見がちなルー・ウォレス老人さえ救出に来なかった。彼はパット・ギャレットによってメシラに連行された。そこで彼は裁判を受け、第1級殺人で有罪となり、リンカンの町で絞首刑に処せられる判決を下された。

5月のある晴れた日、悪名高い無法者であるビリー・ザ・キッドが集落にいるという情報によってリンカンの町は興奮の渦中に投げ込まれた。

多くの者たちが彼を見に来たが、穏やかな瞳を持ち、優美な体つきをした甘美で悲しげな顔をした儚げな少年が著名な無法者だとは誰も信じなかった。

ビリーは強力な護衛の下に置かれて、重い枷を嵌められ、ベル保安官補佐に委ねられた。

ある市民は「この小さい奴が有名な無法者なのか」と聞いた。

「そうだ。彼は恐ろしい奴だ」

テキサスから来た大きな男は「こんな小さい奴が誰かを傷つけるだって」と言った。

ビリーを知っている傍観者は「彼はニュー・メキシコ全土で最も危険な男さ」と言った。

1人の淑女は「このかわいそうな小さな子は絞首刑になってしまうの」とビリーをじっと見つめながらため息をついた。

ビリーを預かることになったベルは「そうだ。奴は怪物だ。死刑を宣告されている」と答えた。

「ああ、何てことかしら。彼を釈放してあげてください。こんなに若くて美しいのに死んでしまうなんて」

執行官は、そんなことはできないと笑いながら言った。

それから彼は軽蔑を込めて「長官に直訴すればいい。そうすれば長官がすぐに恩赦を与えてくれるだろう。長官は彼を一度恩赦したことがあるからまたそうしてくれるかもしれない」と付け加えた。

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