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アーサー・コナン・ドイル北極日記7月31日

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7月31日土曜日

[船は]開けた海に出ると悪魔のようにもみくちゃにされ、西南西のボトルノーズ浅瀬に船首を向けた。我々が1頭でもクジラを捕獲できるかどうかは疑問だった。この地域の他の動物たちのようにクジラは場所を移してしまったのではないだろうか。デイヴィッド船長が4月にそこでクジラを捕獲したことがあるからといって、我々が8月になって再びクジラを見つけられるとは限らないからだ。氷はまったく視界に入らない。私はグリーンランドの巨大な浮氷を二度と見ることはないだろうし、ずる賢いクジラを追い、大きなズキンアザラシを撃った場所で物思いに耽りながら何度もパイプを吸った場所も二度と見ることはないだろう。わが哀れな氷原よ、汝が冷酷で無愛想だと誰が言うのだ。私は晴天の時のおまえも荒天の時もおまえも知っている。私はおまえが穏やかであり親切であると言おう。おまえのすばらしい形の揺れ動く氷山には独特の風情がある。無骨な「締め付け」をしている時でさえ、おまえの浮氷は初々しかった。ああ、汝はあまりにも初々しいので、慎ましい霧のヴェールで汝の魅力を何度も覆い隠してしまった。

私は頓呼法[訳注1]で氷原について描写したが、スカンディナヴィア神話のヨトゥンヘイム[訳注2]とされるスピッツベルゲン島を称賛する言葉に耳を傾けるだろう。私は荒れ果てた高地であるスピッツベルゲン島を強風の中で見て、そしてそこを去った。一日中、西と南西に向かって帆走。夜、我々は長いうねりに揺さぶられ、帆ははためき、厚い霧が周りを覆った。

エクリプス号が視界から消えた。おそらく霧の中、一晩中、汽走していたのだろう。穏やかな海面と濃霧の中、西と南西に向かって汽走。我々は、ヤン・マイエン島の南東80マイル[130km]でトックリクジラを見つけられるかもしれないと期待した。そして、そこからアイスランドのランガネス[訳注3]に向かう。気魄を保ち続けている。今日、流木を何本か見た。夜、我々の[現在の]緯度と経度を示して、どこでそれを拾ったか公表するように求める[手紙を入れた]瓶を船から投下した。トックリクジラ漁は手法がまだ完全に確立されておらず、何隻かの船が中途半端な方法を試みて失敗していた。ヤン・マイエン号は6週間で9頭[のトックリクジラ]を捕獲したが割に合わなかった。今年、デイヴィッド船長は1ヶ月で32頭[のトックリクジラ]を捕獲して十分な利益を出した。今夜、海面はとても滑らかであり、ニシンがいるのを嗅ぎつけてクリオネが集まってきた。私は殻のない変種[クリオネ]を約100匹も捕獲した。魅惑的な餌があるのでトックリクジラが近くにいるかもしれない。空のビール樽のように霧の中でナガスクジラが塩を吹くのが聞こえた。北緯70度59分、東経0度15分。2羽の死んだモーリーとシベリアからの流木を見つけた。さらに数頭のナガスクジラを見つけた。

訳注

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