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ビリー・ザ・キッドの生涯―第五章 ターナーが盗賊たちを追跡

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マリオン・ターナーはリンカン郡の保安官補佐であった。1879年6月8日、彼はビリー・ザ・キッドの逮捕状をその手に委ねられた。若き悪党に対して5件の殺害の嫌疑がかけられていた。彼による犠牲者はモートン、ベイカー、マククロスキー、ブレイディ、そして、ハインドマンであった。

わずかな手勢でキッドだけを逮捕する試みがいかに無駄なものであり危険なものかを知っていたので彼は、郡全体で最も経験豊かな騎手とライフル銃の射手35人からなる一団を組織した。

選ばれた一団はすべて見目麗しい男たちであり、強く逞しく恐怖とは無縁であり、疲労を知らなかった。

マリオン・ターナーは、男らしい態度の勇敢で決意ある若き執行官であった。彼は仕事を引き受けたからにはどんなことがあろうとも、ビリー・ザ・キッドを屈服させなければならないと決意を固めた。

ターナーが追跡していると聞きつけたキッドは男たちに言った。

「おまえたち、厳しい戦いをするか、それともここから逃れるために一生懸命逃げるから。ターナーは尋常な男ではないからな」

63人からなる彼の一味は優勢であったが、キッドは戦闘を避けたいと考えているようだった。

無法者たちは集団でペコス渓谷を遡った。ターナーとその一団がその跡を追った。

6月16日夜、斥候の1人が300ヤード[270m]向こうで2人の無法者が気楽に馬に乗っているのを見た。

斥候はライフル銃を構えると発砲したが、狙いが不正確だった。男たちは撃ち返してきたが、効果がないことを悟って馬で駆け去って視界から消えた。

ターナーはライフル銃の発砲音を聞いて、男たちの本隊に先立って馬を走らせて原因を探った。何が起きたかを知らされた彼は本隊を急がせた。彼らがいるその地域一帯は荒野であった。二つの山脈が徐々に迫っていて、さらに数マイル先で明らかに重なっていてペコス通廊、もしくは峡谷を形成していた。

草が馬の背の高さほどに生い茂り、もし敵が利用しようとすれば好都合な隠れ場所を提供していた。

無法者たちは荒野に幅広い痕跡を残した。フロンティアの住民であればそれを追跡するのは困難ではない。

太陽がほぼを沈みかけていた。その時、先行していた男がビリー・ザ・キッドの[一味の]前衛2人に向けて発砲した。敵と執行官一団の前にすぐに夜の帳が下りたが、[両者は]それほど離れていなかった。

彼らはリンカン[郡]を抜けて、サンミゲル郡のペコス川の水源地帯に入った。

無法者たちは流れの一方にキャンプした。ターナーの一団はその反対側にキャンプした。一晩中、彼らは互いのキャンプの火を見張っていた。住民は、カウ・ボーイたちの叫び声や猥雑な歌を聞いただろう。

夜明けになって保安官は男たちに[出発の]準備をさせた。冷たい朝食を流し込んだ後、彼らは的に向かって慎重に進み始めた。

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