見出し画像

ミュージカル『ハミルトン』歌詞解説34―I Know Him 和訳


はじめに

ミュージカル『ハミルトン』は、ロン・チャーナウ著『ハミルトン伝』(邦訳:日経BP社)をもとにした作品である。

物語の舞台は18世紀後半から19世紀初頭のアメリカ。恵まれぬ境遇に生まれたアレグザンダー・ハミルトンは、移民としてアメリカに渡り、激動の時代の中を駆け抜ける。アメリカをアメリカたらしめる精神がミュージカル『ハミルトン』には宿っている。

劇中では、友情、愛情、嫉妬、憎悪など様々な人間ドラマが展開される。ここでは、そうしたドラマをより深く理解できるように、当時の時代背景や人間関係を詳しく解説する。

”I Know Him”

※歌詞の和訳はわかりやすく意訳。

※歌詞の原文は『Hamilton the Revolution』に準拠。

King George enters.

KING GEORGE:

They say George Washington's yielding his power and stepping away. 'Zat true? I wasn't aware that was something a person could do. I'm perplexed. Are they going to keep on replacing whoever's in charge? If so who's next? There's nobody else in their country who looms quite as large...

「ジョージ・ワシントンが権力を手放して自ら退任したそうだ。それは本当なのか。そんなことができる者がいるとは信じられないな。困惑しているよ。ではこれから誰か別の者が責任を追うのか。そうなったら次は誰だ。他に出てくる者など彼らの国にいないだろうに」

解説:アイゼンハワー大統領の伝記を執筆したことで知られるスティーヴン・アンブローズは以下のように書いている。

彼の敵であったジョージ3世は、ワシントンの二期目が終わりを迎えた1796年に「もしジョージ・ワシントンが彼の農園に戻れば、彼はこの時代で最も偉大な人物になるだろう」と言った。

ここから先は

1,540字
この記事のみ ¥ 100
期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

サポートありがとうございます!サポートはさらなる内容の充実によって読者に100パーセント還元されます。