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女海賊メアリ・リードとアン・ボニー:後編

はじめに

この文章は、『Captain William Kidd and Others of the Buccaneers』(1874)から女海賊メアリ・リード(第12章)とアン・ボニー(第13章)に関する部分を抜粋して翻訳したものである。『Captain William Kidd and Others of the Buccaneers』は、アメリカの歴史家ジョン・アボットによってわかりやすくまとめられた海賊の伝記である。

女海賊メアリ・リードとアン・ボニー:前編の続き

本文

海賊ラッカム—妻アン・ボニー—男装の理由—悪名高きラッカム—メアリとの恋に落ちたアン—奇妙な状況—決闘—フランクの騎士道—捕縛—審判—画家の証言—メアリ・リードの死—絞首刑に処せられたラッカム

その当時、ニュー・プロビデンス島にはラッカムという名前の極悪人がいた。彼は海賊船の船長であり、妻と船室を分け合っていた。 妻は非常に堕落した女性で男装して偽装していた。 彼女はキャビンボーイ[訳注:船室の乗客および高級船員付きの給仕]の役割を果たしていた。このラッカム船長は、国王の布告[訳注:前編参照]に応じて海賊を廃業して赦免を得た。

政府の私掠船の乗組員として男装した妻とともに働きたいと彼は考えた。 乗組員は誰も彼の同行者の本当の性別に気付かなかった。彼女は本当に彼の妻であった。彼女の本当の名前はアン・ボニーである。彼女は粗野で手の付けられない少女だったので、彼女の両親は、ラッカムのようなどうしようもない悪漢と彼女が結婚したと知って非常に落胆して勘当した。

ラッカムとアン・ボニーは同じ船で働いた。実はそこには男装の二人の女性がいたが、そのどちらとも互いの性別について疑いを持たなかった。 堕落している者でなければ、メアリ・リードの仲間たちのような連中とつるむことはないだろうし、彼女がいつもやっているような流儀に染まってしまうこともないだろう。私掠船の乗組員たちは二、三日、船から離れた。古馴染みの仲間たちとともに船に乗り込んでいたラッカムは、 高級船員に対して謀反を起こして彼らを漂流させて船を奪って元の稼業を再開した。 メアリ・リード—我々の言い方ではフランクは、非常に容貌に優れた若者であった。船長のキャビン・ボーイであったアン・ボニーは、ブランクと恋に落ちて自分の性別を打ち明けた。彼女は、ポテパルの妻がヨセフを誘惑しようとしたように[訳注:エジプトの高官ポテパルの妻は奴隷のヨセフを誘惑しようとしたが失敗した]、 あらゆる手段を使ってフランクを誘惑した。あまりのしつこさに耐えかねたフランクは、自分も女性だと打ち明けた。それは二人の女水夫の中をより深める結果となった。

彼の妻がフランクと仲良くなったのを見たラッカム船長は、激しく嫉妬するようになった。フランクの喉を掻き切るとラッカムはアンを脅すようになった。海賊の残忍な性質をよく知っていたアンは、メアリの命を何とかして救わなければならないと思ってラッカムにも[フランクが実は女性だという]秘密を打ち明けた。ラッカムは秘密を漏らさないようにした。そんなことをすれば、フランクは甲板に群れている荒くれ者たちに何をされるかわからないからである。

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