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草露 文(あや)
2024年5月24日 07:56
草原を駆ける西風が草露を拭う。 その青年は、草原に出来た小径を歩いていた。厚い雲が悠々と漂う晴れた昼間のこと。風に吹かれながら歩くその姿は、長い時間歩いていたにもかかわらず、風に足を掬われるかのような、疲れを知らない、軽い足取りをしていた。これから向かう場所へ、期待に胸を弾ませながら、青年はこれから起きる《出来事》に対する想像をたくましくしていた。 青年はささやかな物書きであった。 数々の