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草露 文(あや)
2024年5月24日 01:26
古びた廃墟に長い影が二つ並んでいる。昼間、燦々と輝いていた太陽が今では優しい橙色に変わっている。世界と二人を包み込むその光は、どこか新しくも懐かしいような、一種の宗教画に見る後光のようだった。 しばらく黙って夕陽を眺めていた二人。しかし、静寂を破って、青年が少女に声をかけた。「そろそろ日が落ちるし、町まで戻ろうか」「確かに、もう戻らないと」 少女は青年から離れるようにして、夕陽のある方
2024年5月24日 04:19
「よぉ兄ちゃん。あの少女に会ったんだろ?」 青年が町の宿に戻ると、宿屋の店主が話しかけてきた。何故この店主は、青年が少女と会ったことを知っているのか。不思議に思いながらも返事を返した。「ケイラのことですよね。会いましたよ」「だろうな、コートの裾が切れてるぜ」「え?」 コートの裾を見ると、まるで切り刻んだかのような切れ目が残っていた。店主が話を続ける。「あの黒服の少女はな、死神なんだよ。
2024年5月24日 07:56
草原を駆ける西風が草露を拭う。 その青年は、草原に出来た小径を歩いていた。厚い雲が悠々と漂う晴れた昼間のこと。風に吹かれながら歩くその姿は、長い時間歩いていたにもかかわらず、風に足を掬われるかのような、疲れを知らない、軽い足取りをしていた。これから向かう場所へ、期待に胸を弾ませながら、青年はこれから起きる《出来事》に対する想像をたくましくしていた。 青年はささやかな物書きであった。 数々の