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草露 文(あや)
2022年2月7日 14:29
草原を駆ける西風が草露を拭う。 その青年は、草原に出来た小径を歩いていた。厚い雲が悠々と漂う晴れた昼間のこと。風に吹かれながら歩くその姿は、長い時間歩いていたにもかかわらず、風に足を掬われるかのような、疲れを知らない、軽い足取りをしていた。これから向かう場所へ、期待に胸を弾ませながら、青年はこれから起きる《出来事》に対する想像をたくましくしていた。 青年はささやかな物書きであった。 数々の
2022年2月7日 20:11
少女の名はケイラと言った。「ここでずっとあなたを待ってた」「……人違いじゃないかな」「いいえ」 不意に“待ってた”なんて不思議な事を言うものだから、青年は少し距離を取ってしまった。「君はここで何をしているんだい?」「墓守をしながらあなたが来るのを待ってた」 少女が廃墟で墓守とは。待つだけであれば墓守をする必要は無いだろう。それはただのごっこ遊びではないかしらん。しかし、ただのごっこ
2022年2月12日 11:06
静かな時間、沈黙の時間が二人を包み込む。 ふいに、はっとして、急いで少女に謝った。「どうしてなんて聞いてごめん!答えづらいこともあるのに、全然気が付かなくて……」「いい。別に気にしていない」 少女は少し考える様子を見せたあと、思い切ったかのように話し出した。「神は人の内にいる」 そう言い放った少女は、真剣な表情をしていた。少女の言葉に、少し気押されしたが、すぐに言葉を返した。「君が
2022年2月25日 10:40
厚い雲が日差しを遮り、二人の居る場所に陰を作る。それもつかの間のことだろう。吹く風が少し冷たく感じた。「次は僕の考えを聞いてくれないかな?」「構わない」 少女はどこか嬉しそうに見えた。「じゃあ話すよ。人々には過去の出来事で受けたトラウマがある。そのトラウマは今も人々を苦しめている。人々の心が過去からの影響で『今』も傷ついているのに、それで過去が存在しないなんてありえないよ」 そう言葉を