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Textile:Filecoinブリッジの紹介

HackFS 2021は、検閲に強く、分散化され、信頼されるデジタル世界を構築することに焦点を当てた3週間のバーチャルハッカソンです。以下は、 TextileCarson Farmer氏によるFilecoinブリッジについての説明です。フルバージョンもあります。

オンチェーンか、オフチェーンか: どのようなストレージを?

今日、インターネット上で何かをしようとしている人は、ストレージを考慮する必要があります。従来、運営会社はクライアントにストレージを提供し、そのデータを誰でもアクセスできるようにインターネット上で公開して、クライアントにその料金を請求していました。

分散型のインターネットでは、ストレージの供給に独自の方法があります。分散型ストレージでは、ストレージプロバイダーはクライアントとインターアクトし、クライアントのデータをブロックチェーンに載せるための取引を行います。

残念ながら、オンチェーンストレージは高価で、オフチェーンストレージは脆弱であるという欠点があります。日常のインターネット使用に対応するために、なにか妥協点がないのでしょうか?

この問題を解決するために生まれたのがIPFSです。現代のウェブサイト運営会社のように、デジタル資産をハードディスクに保存するのではなく、データはIPFSネットワーク上に保存され、複数のストレージプロバイダーに分散されます。

IPFSでは、ファイルを指向する代わりに、コンテンツID(CID)システムを開発し、CIDが与えられれば、誰でもゲートウェイを使ってそのコンテンツにアクセスできます。IPFSは、データはオフチェーンに、CIDはオンチェーンに保存することで、データ保存のコストを削減できました。このようにIPFSゲートウェイを介してファイルにアクセスし、複数のサーバーからコンテンツアドレッシングを行う方法は、弾力性と冗長性を生み出します。

ストレージプロバイダーは、ネットワークに対するストレージの貢献度に応じて報酬を得ることができます。 Textileは、これらのCIDで表現されるコンテンツへのアクセスを提供するという点で、データの運営会社のようなものになります。

このようなインセンティブ構造により、人気の高いコンテンツほど、ストレージ提供者にとってより良いリターンが得られます。一方、これは、需要の少ないコンテンツは未来の分散型ストレージシステムには存在しないということを意味しているかというと、答えはノーです。

小さなファイルやあまり人気のないファイルは、pinningサービスを利用して、データをネットワーク上に固定したり、「ピン留め」したりすることができます。このアプローチの欠点は、ファイルにアクセスするにはpinningサービスが必要なため、ファイルが分散化されていないことです。

Filecoinのクリプトエコノミックなインセンティブは、より小さなファイルや需要の少ないコンテンツの保存にたいして、より簡単な方法を提供しています。これは、複数のファイルをまとめてバッチとしてファイルシステムにアップロードするという「バッチ処理」によって実現されています。バッチは、ストレージプロバイダーに興味を持たせるほど大きいですが、そのなかには独自のコンテンツIDを持つ小さなファイルを含んであります。

直近のFilecoin開発成果の一つは、NEARブリッジです。

ブリッジとは何か、ストレージとの関係は?

ブリッジは、あるブロックチェーンからデータを取り出し、別のブロックチェーンで使用するための経路、つまり「ブリッジ」を作成する複雑な創造物です。NEARブリッジは、NEARブロックチェーン技術とそのトークンを利用してFilecoinネットワークでの取引手数料を支払うことを可能にします。

このインターアクションは、NEARメインネットのユーザーが、ネイティブのNEARトークンを使ってFilecoinストレージを利用できるという点で画期的なもので、これまでは不可能なことでした。NEARブリッジは、現在開発中のブリッジのなかの一つで、デモステージに入りました。

その他のクロスチェーンブリッジとしては、Ethereumメインネットへのブリッジや、ビットコインのブロックチェーンにブリッジするものもあります。ブリッジが役立つのは、いくつかの固有のメリットがあるからです。

利便性:ブリッジはFilecoinとのやり取りを容易にするために、バッチ処理やディールメーキング、ファイルのコンパイルなどをサポートします。手動でコントラクトやディールにアクセスする代わりに、ブリッジはそのプロセスを自動化し、ユーザーにより親しみやすく、クリーンなフロントエンドを提供し、ユーザーはコストだけに集中することができます。
キャッシング: 通常、一括アップロードの場合、キャッシングという期間があります。この期間において、ファイルがまだFilecoinネットワークにアップロードされているにもかかわらず、ユーザーは自分のファイルにアクセスすることができます。キャッシングは、ファイルへのスピーディーなアクセスにも役立ち、あるチェーンから別のチェーンへの移動にかかる時間も短縮できます。
その他のサービス: ブリッジの構築方法によっては、コンテンツのインデックス化やマッピングなどの追加サービスを提供することも可能です。

NEARブリッジの動作

HackFSでは、Carson氏はNEARブリッジデモを発表し、その優れた機能性をみせてくれました。このブリッジはまだテストネット上でしか動いていないが、ファイルのアップロードやオンチェーンウォレットとのやりとりにおいて大きな将来性が伺えます。

ライブコーディングでは、ウォレットに接続し、NEARメインネットからファイルのアップロードを実行し、すべてのコストをNEARトークンで支払うことができる簡単ななアプリが作成されました。その結果、ファイルがFilecoinネットワークにアップロードされ、そのファイルには(Textileのような)ゲートウェイを介してアクセスするためのコンテンツIDもついてあります。

NEARメインネット上のweb3アプリケーションとのシームレスな統合により、Filecoinの分散型ストレージシステムのパワーをますます活用できる日が近いかもしれません。また、その他のブリッジによって、異なるネットワークのユーザー間でも分散型ストレージの受け入れが進んでいきます。

いつになったら実用化できるの?

今回のHackFSのデモでは、ベーシックな動作確認ができましたが、まだいくつかの課題が残っています。また、チームはクロスチェーン機能の実現を目指して、他のブリッジの実装にも取り組んでいます。

Filecoinのブリッジ開発はまだ始まったばかりですが、今回のデモを見る限りでは、メインネットのプロトタイプが完成するまで、それほど長くはかからないでしょう。私たちはわくわくしながら、それを自分の目で見ることができるでしょう。

分散型ストレージを受け入れたマルチチェーンブリッジは、全体的に計り知れない可能性を有し、世界を変えていくほどのスコープをもっているでしょう。