大規模データのためのFilecoin
大規模データセットのためのソリューション、そして、クライアントにその性能を探索させるインセンティブとして、Project Gravity IIを紹介します。
Filecoinネットワークは、すでに15エクスビバイト(EiB)のデータを保存できる性能に達しました 。今日、700くらい組織がデータの保存と検索にFilecoinを使用しています。より多くの個人や分散型アプリケーションが分散型ストレージに切り替わっている中、Filecoinは従来の大手企業もWeb3に迎え入れる準備を整えてきました。
このネットワークは、企業規模のクライアントに向けて、データの保存、セキュリティの保障、そして大規模なデータセットの受け入れのために独自に構築されてきました。さらに、Filecoinエコシステムは最近、これらのクライアントが大規模なデータセットをFilecoinに持ち込むインセンティブとなるセールスレファーラルプログラム、Project Gravityを発表しました。 Protocol Labsは、データ保存のインセンティブを高めるために、このプログラムを継承したものとして、Project Gravity IIを発表することにしました。
クラウドからの脱却
現在、ほとんどの企業では、クラウドストレージを利用してデータを保存しています。クラウドは、遠隔地からアクセスし、認証された複数のユーザー間で共有したいデータを、組織が安全にホスティングする方法を提供しています。表面的には、クラウドは組織にとって有効なソリューションのように見えますが、その中身をよく調べてみると、次のような潜在的な欠点があることがわかります。
• 中央集権的: すべてのデータは1つの会社で保管され、多くの場合、データは1つまたはごく少数の地理的に異なる場所に保管されています。そのため、サーバーは地政学的リスク、自然災害リスク、セキュリティリスクにさらされています。
• 脆弱性: クラウドストレージサービスは、データの転送を制限することで、データを所有する人間からデータを隔離することができます。一般的に、企業は単一のベンダーに投資しているため、データを複数のインスタンスで維持したいクライアントにとって、このようなロックインは懸念材料になり得ます。
• コスト: クラウド上の企業データストレージは、利用料は一概ではありません。ロックインは、組織の価格交渉力を低下させ、取引コストが高い市場を生み出す可能性を高めました。
Filecoinは、これらの欠点に対する包括的な解決策を開発しました。ここでクラウドストレージサービスが実現できるすべてのユーティリティを、データストレージの集中管理システムの脆弱性なしに提供しています。下記のような利点があげられます。
• 分散型: 単一障害点(single-point-of-failure)やロックインはありません。データは世界中の複数のストレージプロバイダーに分散させることができ、プロバイダーは個々のリスクに直面しても、データの永続性と可用性を保証することができます。
• ロバスト性: 暗号データは毎日検証され、マルチコピーアーキテクチャにより、常に冗長性が確保できます。
• 効率的: 分散型ストレージは、インフラのコアとして、競争入札方式を採用しており、これによりクラウドストレージよりも安価に利用することができます。ここではエッジに近い形でデータが保存されています。
つまり、これはFilecoinネットワークは巨大なデータセットに対応できるようになっていることを意味しています。Filecoinネットワークでは、ウィキペディアの全文6万部以上に相当する15エクスビバイトのデータストレージをもち、また、このマイルストーンはメインネットのローンチからわずか1年で達成されたものです。
多くの組織が分散型ストレージのメリットを実感することができるはずです。これは、Protocol Labsが、クライアントに大規模なデータセットをFilecoinに保存するインセンティブを与えるセールスレファーラルプログラム「Project Gravity II」を開始する理由になります。
ネットワークに新しいクライアントをつれてきて、報酬を得よう!
Project Gravityは、Filecoinに保存される大規模データセットの数を増やすために、Protocol Labsが立ち上げた一時的なインセンティブプログラムです。紹介者は、100テビバイト(TiB)以上のデータセットにつき最大100FIL、1ペビバイト(PiB)以上のデータセットをオンボードで最大500FILの報奨金を得ることができます。クライアントが必要な条件をクリアした時点で奨励金が支払われることを約束します。
3,500を超えるストレージプロバイダーがネットワーク上でサービスを提供しており、Filecoin上で大容量データセットを扱う機会が増えてきています。このプログラムは、これらの大規模データの所有者が、ストレージの代替オプションとしてネットワークを探索するためのさらなるインセンティブを確保するために開発されました。
2021年9月に「Project Gravity」第1弾がスタートし、現在の「Project Gravity II」が2022年4月1日まで募集する予定です。プログラムの詳細と要件については、オリジナル発表をご覧ください。ここでは簡単な概要をみてみましょう。
具体的なデータセットの種類
Project Gravityは、特定の種類のデータセットにフォーカスしています。紹介者が報奨金を受け取るためには、以下のような「理想的な」データセットの条件を1つ以上満たしている必要があります。
1. データセットは、100TiB以上であること、
2. 動的なデータセットに比べてアクセスが一定でないため、データセットは静的であること、
3. 理想的には、暗号化の必要性が低いため、データセットがパブリックなものであること、
4. 公共財関連のデータセットであること。
FilecoinのユーザーであるShoah Foundationは、かれらがもつVisual History ArchiveをFilecoinに保存しています。Shoah Foundationは、ホロコーストやその他の大量虐殺の生存者の証言を記録しており、これらの重要な文化的アーカイブを長期的に保存するため、Filecoinネットワークにアップロードすることになりました。これはまさにProject Gravityの紹介にとって優れた一例でしょう。
新規クライアント向けのオンボーディングプロセス
もしあるチームがストレージにFilecoinを使用することを決めた場合、オンボーディングのプロセスは比較的に簡単です。
1. クライアントは、まずこちらのアドレスで登録する必要があります。
2. Protocol Labsからその組織に連絡し、追加情報を含め詳細を詰めていきます。
3. クライアントとProtocol Labsは、オンボーディングとデータセットサイズについて詳細を詰めるため、イントロダクションコールを行うひつようがあります。
4. クライアントには、Protocol Labsとのオンボーディングプランに参加していただき、そこからFilecoinへのデータオンボーディングを開始していきます。
奨励金を獲得するための基準
一般的な奨励金制度と同様、Project Gravityの奨励金には基準条件があります。個人が奨励金を請求するために必要なルールとして、以下のようなものがあります。
• Protocol Labsとクライアントとの間には、明確かつ簡潔な合意が必要です。
• クライアントは、Filecoinシステムの新規クライアントではなければなりません。
• 組織は、Filecoinのユーザーとして紹介されること、マーケティングやPRプロジェクトに協力することに同意する必要があります。
紹介者は、奨励金を複数回申請することができます。Project Gravityは、Protocol Labsが新規顧客を獲得するたびに、紹介報奨金を支払います。また、NPOが紹介者に当たる場合、FILトークンで支払われるのではなく、寄付金として報酬を得ることもできます。
大規模なデータセットを持つ企業や組織がFilecoinを受け入れることで、より良いインターネットインフラを構築することを目標とするWeb3がもつポテンシャルが、最も恩恵を受ける人々から奪われないことを保証するでしょう。