D&D3.5版引退勢に送る、D&D5版のススメ
2020年初めに書いたものなので、現在とやや異なっている部分もあります。
基本、内輪向けの文書ですが、以前D&D3.5版をやっていて、何らかの理由で離れた方(例えば、就職・結婚で仲間と会う機会が減ったなど)には、刺さる文章かもしれません。
私がD&Dを再開するまで
私がD&Dを再開し、1年半が経った。
きっかけは、アニメ版「ゴブリンスレイヤー」経由でやる夫スレ版「ゴブリンスレイヤー」を見て、TRPGやりたい熱に火がついた事。
そこに丁度D&D5版日本語版コア3冊が発売されていて、日本語プレイ環境がひとまず整っていた事。
この2つが重なり、私は「何でもいいからD&Dやりたい病」に罹患したのであった。
コミュ障である私が、自分からゲームカフェへ行ったり、コンベンションに行ったり。以前では考えられなかった活動ぶりだ。
そんな感じで何回かプレイしてみた今、改めてD&D5版(以下5版)というゲームに対する、私なりの意見をまとめたいと思う。
D&D5版をオススメする3つの理由
5版は特に、かつて3.5版が好きだったが何らかの理由で離れて、時間が経った人間にオススメだ。
一方で、3.5版に比べ簡単なので、初心者にもオススメであり、自分で仲間を集めて布教するにももってこいだ。
以下に、5版をオススメする理由を3つ述べる。
1. システムが適度に軽い
5版はシステムが軽い。とにかくプレイヤビリティを下げないように、プレイの流れを止めないように、という工夫が随所になされている。
その分、多少リアリティを犠牲にしている部分はあるが、実際にプレイしてみると、これが意外と気にならないものなのだ。
具体的に、システムを軽くしている要因は次のようなものがある。
「有利/不利」の概念(修正の計算が大幅に簡単になる)。
攻撃ボーナス・技能ランク・STボーナスの、習熟ボーナスへの一本化(覚えなければいけない数値はそれだけ減る)。
呪文集中の概念(いわゆるバフツリー対策)。
戦闘ルールの簡略化(移動とアクション類・攻撃回数の概念の単純化、挟撃の廃止、5フィートステップの廃止、機会攻撃発生条件の緩和。戦闘処理が速くなる)。
挙げていけばきりがないが、このように随所にプレイが軽くなるような工夫が施されている。
かといって、原型を留めぬほど簡略化しているわけではなく、ちゃんとD&Dしており、数値を見て冒険の光景をイメージできる程には、リアリティの部分も確保されている。
2. 自由度が適度に高い
5版の自由度は、適度に高い。逆に言うと、選択肢が適度に抑えられている。
例えば、3.5版でキャラメイクに死ぬほど時間がかかった経験はないだろうか。
マルチクラスがあまり有利じゃなければ。
特技の数がこんなに多くなければ。
技能が技能ポイント制じゃなければ。
魔法の道具がこんなポンポン金で買える環境でなければ。
こんなにキャラビルドに悩む事もないのに。
これは、選択肢が多すぎるが故に生まれる問題だ。
ここらへんが、5版では解決されている。
基本、マルチクラスはそこまで強くならない。
特技は数が少なくなり、かつ能力値上昇との選択制になった(そもそも特技が選択ルール)。
技能は4版の流れで、種類を少なくまとめられ、また技能ポイント制は廃止、技能は持っているか/持っていないかの2択になった。
魔法の道具は基本ルールでは購入できないようになった。
というように、適度に自由度が下がっている。
一方で、パーティー構成のバランスという視点からみると、自由度は高くなっている。
3.5版は、まず回復役がいないと詰むのでクレリック必須。
罠を調べられないと詰むのでローグ必須。
様々な魔法的解決状況に対応できないと詰むのでウィザード必須。
…と、魅力的なクラスがいっぱいあるのに、まともに試せないもどかしさがあった。
5版は、ヒーリングポーションの一般販売化や、キュアのワンドの消失、全体的に防御より攻撃よりのバランスによって、必ずしもクレリックは必須ではない。
盗賊道具は背景でも取れるし、罠は知覚で普通に調べられるので、ローグも必須ではない。
魔法的解決状況も、特定の呪文を使えないと詰む、という状況は減ったので、ウィザードも(3.5版に比べれば)必須ではない。
また、ルール的な文化も3.5版と5版では大分違う。
3.5版は、ありとあらゆる現象を、ルールで規定できるようにシステムを組んでいるが、5版はそこらへんはかなり緩く、最終的には裁定をDMに任せる例が多い。
好みの問題もあるが、特にゲームを楽しむというより、ストーリー・ロールプレイを楽しみたいという人には、この自由度の高さは魅力的だ。
3. キャラの設定についてシステム側が補強
5版はキャラのデータ的な強さより、設定やロールプレイについて表現できるように、システム側が対応してきてる感がある。
対応するルールは、背景とインスピレーションだ。
背景は、ソードワールドでいうところの「生まれ」だ。これによって、初期装備や技能が変わってくる。
さらに、「人格的特徴」「尊ぶもの」「関わり深いもの」「弱み」の4つの背景特徴を決める事で、キャラの設定を作りやすくなっている。
ここらへんのルールが基本ルールに入ったのは、キャラの設定補強という点で、大変大きい。
インスピレーションは…これについては、まだまだ調整不足なルール、という印象がある。
良いロールプレイをすれば、判定を有利にできるボーナスが貰える、というものなのだが…その基準や具体例が全く示されていないので、各DMが自分なりのインスピレーションルールを模索しているのが現状だ。
逆に言えば、それぞれのDMのカラーが色濃く出るルールなので、卓ごとに違った特徴・世界観が出て、面白いルールとも言える。
ちなみに私が初めてやった卓では、そもそもインスピレーションのルールを使わなかった。
何から買えばいい?
「よし分かった、5版やりたいけどどうすればいい?」
当然そういう質問が出るだろう。
まずはルールを用意することからだ。D&Dは伝統的にコアルールが3冊、これは3.5版の頃と一緒だ。これを揃えようとすると、2万円弱する。
とりあえずプレイヤーだけやってみたいと思ったなら、プレイヤーズ・ハンドブック(PHB)だけ購入、それでも6千円する。
「5版がいきなり6千円払うのに相応しいシステムなのか?」と訝しむ人。そんな人の為になんと!
お試し版のルールが、pdfで無料で配布されている!
このルール、「ベーシック・ルール」というものだが、PHBと比較して、ルール(裁定)の部分は何1つ削られていない。
削られているのは、一部の種族・クラス・背景・呪文・選択ルールであるマルチクラスと特技、といったデータの部分。
つまり、ベーシック・ルールを試してみて、もっとバリエーションのあるキャラクターを作りたいと思ったらPHBを買う、でよい。
良い時代になったものである。
最後に
D&D5版は3.5版のエッセンスを残しつつ、4版の良いところもおいしいどころ取りし、原点回帰的にCD&D的な要素を復帰させつつ、それでいて軽量化・洗練化されており、TRPG初心者から上級者まで満足できるシステムとなっている。
かつて3.5版にどっぷりハマっていたあなた、復帰するならば今だ!
D&D5版はいいぞ!