家族が、急に事故や病気で重篤な状態になってしまったら
こんな事は、他人事、私の身には起きることではない…というより、こんな事が自分の家族の身に起きるなんて思ってもいませんでした。
私の父は、健康に人一倍気をつかっていて、家族の誰よりも元気でした。いつもの日曜、いつもの日課の通り、父は、サイクリングに出掛けて行きました。
でも、帰ってきませんでした。
あれ...そろそろ帰ってくる頃なのにな…そう思い始めてから、すぐに電話がひっきりなしに鳴り、自宅にまで警察官が来て、父が病院に運ばれたこと、すぐに病院に行くようにと伝えられました。
1年経った今でも、この日の事、その後の入院期間、思い出すと、体が震えて、涙が止まりません。
時間が経った今でも、この状態ですから、事故直後は、非常に激しいショック状態であったことは、事実です。
電話の音、救急車の音、病院にある医療機器の音、その時の状況に関わる音に、とても敏感になりました。音を聞くと、すぐに辛く悲しい気持ちがこみ上げてきます。
私たち家族は、父の事故から、短い時間の間に、大きな決断をしなければなりませんでした。ショック状態にあるにも関わらず、何を今やるべきか?を必死に調べて、行動に移さなければなりませんでした。
もちろん、このようなことが起きると思ってもいなかったため、何をしなければならないのか全く知りませんでした。家族、親戚で協力して、必要だと思われることに優先順位をつけて、連絡したり、書類を取り寄せたりしました。
私たちが取った行動が必ずしも正しいとは限りません。一つ一つの家族によって取るべき行動は変わってきます。
それでも、同じ状況になってしまった方たちの役に立てればと思い、私たち家族が、父のために、自分たちのために何をしたのか記しておきます。
家族が、急に事故や病気で重篤な状態になってしまったら、何をするべきか?
•親戚へ連絡する
•勤務先へ連絡をする
•高額療養費制度 限度額適用認定証を取得する
•必要な生活費を用意する
•看護、介護に必要なものを用意する
•勤務先と話し合う
•保険会社へ連絡する
•成年後見制度の検討
私たちは、病院の救急センターへ駆けつけました。私が、一番最初に到着したこともあり、警察官立ち合いの元、娘の私が、父の本人確認をいたしました。
処置室に通され、そこには人工呼吸器が着けられ、顔に傷を負った中年の男性がベッドの上にいました。
それは、父でした。
嘘だ、違う、私のお父さんがこんな風になるなんて違う、何かの間違いだ、私は怖くて、父の真横に立つことができませんでした。涙が滝のように溢れ出し、動けなくなりました。この時には、祖母も到着しており、私と同じように泣き続けていました。
その後、病院へ向かっている途中の母と弟へ連絡を取り、本人確認があり、父だった旨を伝えました。
すぐに家族全員が到着し、医師から丁寧に、病傷の説明がありました。
意識がないこと、もし意識が戻っても社会復帰は、ほぼできないということ(絶対できないという説明はしませんでした)、自発呼吸ができていないということ、父の体の状態について説明がありました。
泣き崩れる母と祖母、立ちすくむ私と弟、息ができず、苦しくなり、頭の中が真っ白になりました。
そして、この事実と直面しショック状態にあるにも関わらず、さらに過酷な状況が待ち受けていました。人工呼吸器の取付をするかどうかを決断しなければなりませんでした。
すでに取り付けられていた人工呼吸器は、簡易のもので、処置をする際に取り付けられたものでした。そして、人工呼吸器を取り付けるかどうかを、家族が決め、取り付けた場合、日本の現在の法律では、心臓が動く限り、外すことはできません。
(海外では、延命治療が認められていない国もあり、人工呼吸器の取り付けができないところもあるそうです。)
人工呼吸器は、体への負担が非常に大きく、患者を苦しませることになる。
調べると、このような記事が多く出てきます。(医学的根拠があるかどうかは、ここでは言及しません。)
延命治療の一つ、人工呼吸器の取り付けをすると、入院期間が非常に長くなる可能性が出てきます。
父のように血圧が低く昇圧剤が扱える病院での治療に限られる場合、月20~50万程度の医療費がかかるそうです。大きく医療費に差が出るのは、大部屋か個室か、どちらを選ぶかです。
そして、看護介護が必要となると、家族の仕事への制限が出て、収入が減る可能性もあります。
私たちは、父が加入していた保険を組み合わせ、家族全員の預金を合わせれば、やっていける、そう判断し、延命治療は経済的に可能と判断しました。
ただ、延命治療により、父がさらに苦しむことになるかもしれない、もしかしたら延命治療を本人が望んでおらず、私たちのエゴにより延命治療を行うことになるかもしれない、この二つを、時間が許される限り、家族で話し合いました。与えられた時間は24時間という非常に短い時間でした。
この24時間の間に延命治療をするかどうかと言う決断を迫られ、私たち家族は、苦しみました。
そして、私たち家族は、延命治療をする、と決断しました。
母が、お父さんは生きたいって言っていると思う、そう言ってくれたことで、家族で、全力で父を助けよう、そう心に決めました。
そこからは家族一丸となって一気に行動を開始しました。
•親戚へ連絡する
私たち家族(母、弟、祖父母、叔父、叔母)の他にも、必要と思われる親戚へ連絡をしました。これは、祖母と叔父、叔母に協力してもらい、私と母と弟は、父の治療に専念しました。
•勤務先へ連絡をする
•高額療養費制度 限度額適用認定証を取得する
当日が日曜でしたので、翌日、私たちは、父の勤務先へ、父の事故と容体について連絡をしました。その際、高額療養費制度 限度額適用認定証の発行を依頼しました。(実際には、父の勤め先の総務の方がすぐに手配してくれましたので、私たちから進んで依頼しておりません。自分たちだけではこのタイミングで気づけなかったと思います。)
この制度は、高額医療費がかかる場合において、とても大切な制度です。毎月の医療費の限度額が設定され、それ以上に費用がかからないようになり、医療費の負担が減ります。限度額は、収入により異なります。差額ベッド代は、対象外です。
その後、自分たちの勤務先に連絡をし、しばらく出勤ができないことを連絡しました。
•必要な生活費を用意する
次に必要な生活費を用意しました。私の家は、父が生活の基盤になっておりました。そのため父の口座から、当面の生活費を引き出して用意しておく必要がありました。父の口座の管理は母が行っておりましたので、母に生活費を用意するようにお願いしました。
•看護、介護に必要なものを用意する
そして介護、看護に必要なものを取り揃えました。これは医療費や介護費の控除に使える可能性がありましたので領収書を発行してもらい購入しました。必要なものは、入院先の看護師、介護士さんたちが詳しく教えてくれましたので、それに従って用意いたしました。
•勤務先と話し合う
私たちは父の病院の近くにある私のアパートを拠点として父の介護看護にあたろうと考えました。
そのため長い時間、介護看護の時間に時間を費やすことになるため、勤務先との話し合いが必要となりました。家族で交代で父の看病にあたるために自宅待機、もしくは自宅勤務が可能であるかどうか交渉しました。
母はちょうど更新の時期に近づいておりましたので仕事を辞めました。弟は在宅勤務の許可を得られたため規定に沿って在宅勤務をすすめました。
私は、社内で話し合いをしましたが、その時点で在宅勤務の許可がでませんでした。そのため当分の間、有給休暇または介護、看護休暇で休みを取るとことにいたしました。
このように勤め先との交渉は非常に大切になります。家族の介護、看護において、不自由なことがないような勤務形態であると非常にその後のストレスが少なく済みます。
•保険会社へ連絡する
その次に各保険会社への連絡を行いました。加入しているほとんどの保険会社に連絡を取りました。もちろん医療生命保険、自動車保険などです。各保険の契約内容によって、保証される内容が異なります。入院手術の特約など詳しく確認する必要があります。保険金の給付の対象となるかどうかは保険会社によって、手術とみなすか処置とみなすかなど、様々な項目において判断が異なるものがあります。
各保険会社から保険金給付の申請書類が手配され、それに提出が必要な書類を取り寄せし、揃えました。場合によっては保険会社の担当者の方に話を直接聞きに来てもらうこともありました。
不安な状況において、保険担当者の方と話をすることは、私たちにとって、心強いものでした。そのため、経済的な心配をせずに、父の治療に努められたと思います。
•成年後見制度の検討
それから、成年後見制度を検討しました。治療が長期に渡ることを考えておりましたので、治療費、生活費のために、父の預金を家族が動かすことを法的に問題がないようにするためです。
成年後見制度というのは、自己判断が衰えてきてしまったり、自己判断そのものができない場合において、代わりに指定された後見人が、その人の財産を管理することが可能になります。この申請をして後見人を立てることが可能になるまで約4ヶ月から半年程度かかるといわれています。順調にいけば4ヶ月以内に後見人を決定することができるそうです。
知人の弁護士に相談し、成年後見制度を申立し、後見人を母にする場合、どのような書類が必要になるか話し合いをしました。
父の容体が良ければ成年後見制度を申し立てする予定でしたが、父の容体が非常に不安定であることにより、この制度の申請は優先度が低いと判断し、他の事に時間を割きました。
とても重要なものは2つあり、高額療養費制度限度額適用認定証と保険の給付金申請です。
これにより私たちは父の延命治療をすると言う決断を迷わずすることができました。
それぞれの家族には、それぞれの状況、条件、方針があります。家族でよく話し合い、一丸となって治療にあたる、みんなで協力し助け合いながら、進んでいくことが大切です。