株主総会ハイシーズンを終えてホッとしてるあなたへ捧げる―「株価におもい悩む社長への処方箋」(前編)
株主総会ハイシーズンを終えてホッとしているIR担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。わかっちゃいるけど株価におもい悩む社長の本音にIR担当者はどのように対応すればいいか?を3人で話してみました。忙しいIR担当者の方々のお役に立てれば幸いです。
「株価にどうすればいいか、おもい悩む社長の本音」にどのように対処すればよいか?IR担当者・5つの視点
※まず前篇は、そもそも論で知っておかねばならない前提から始まりました。
J(池松):今日はそれぞれ状況は違えど「多くのIR担当者」が知りたいと思う話ができればと思います。よろしくお願いします。
N(中村):Sさんには色々とアドバイスを頂いていてありがとうございます。今日はいつもの調子でいろいろお話しできればと思います。
S氏:そうですね。中村さんとも2年近くのお付き合いになりますので、ざっくばらんに話したいと思います。NGなどの編集は池松さんが頑張ってくれるでしょう。
J:頑張ります!マジでSさんは早口なので、ゆっくり目でお願いします。
0:そもそも社長のタイプは大きく2つに分かれる
J:そもそも論ですが「社長のイライラ」って言っても社長の置かれた状況やタイプも千差万別だと思うのですが、読者も「時短」で情報を摂取したいと思います。ざっくり社長はどのように分類できるでしょうか?
S:そうですね。ざっくり大きく2つに分類できると思います。
良い悪いは別として、Aの場合は年収が上下することはないにしても、自己の保身が主な目的になりますし、Bの場合は、それに加えて自己の資産に関わるので、切実な本音があります。ですので相手の立場と気持ちを考えて、対処やコミュニケーション方法が変わると思います。まぁ社会人としては当たり前なのですが、相手に合わせて「何に対して考えているか」を把握する必要はあるでしょう。
J:そうですね。様々なタイプの企業をご経験されてきた、Sさんならではの視点ですね。
1:そもそも、社長や経営陣と「前提の共有」が大事
J:ではぶっちゃけ、Sさんの場合「わかっちゃいるけど、株価におもい悩む社長」にどんな対処をしているのですか?
S:幸いなことに弊社の社長は企業価値やIRについて理解があるので、そのような対応に迫られたことはないのですが、そのような場合に備えてIR担当者が、そもそも準備しておくことはあると思います。
J:なるほど。具体的にそれは?
S:そもそもIRとは「株価を上げるものではなく、適正な株価にすること」です。適正な株価水準は、金利や景気、国際関係など様々な外部要因と、自社の業績と将来性によって形成されます。適正ラインを超えているのであれば下がる可能性が高いですし、外部要因が変わると適正ライン自体が下げられることもある。そういった認識が社長や社内に周知されていないと不要なイライラを抱えてしまうことになります。逆に、適正ラインよりも下回ってしまっているのであれば、経営やIRの頑張りどころであると言えるかもしれません。これは、前回のメルマガのコラムでも書いたことなのですが、頭ではわかっちゃいるけど、実際にはこの前提が共有されてないことがあるのではないでしょうか。
2:そもそも、「社長と信頼関係が構築できてるか」が大事
J:では、その前提が共有されていても、「わかっちゃいるけど、株価におもい悩む社長」に対応するには、どのようなスキルが必要なのでしょう?
S:これも幸いなことに、弊社の社長と私には、頻繁に連絡を取り合える信頼関係ができています。もちろんその前提として、IRなら私という責任者のポジションにつかせてもらっているというのもあると思います。なので、LINEなどで、連絡を取り合いたい時に取れるようにしています。まさにコミュニケーションそのものです。
3:「IR責任者と社長との対話力」と「市場との対話力」は違う
J:では、そのコミュニケーション力とは対話力だと思うのですが、それって具体的にはどんな要素を知っておくべきなのでしょうか?
S:まず、市場を目の前にしている社長の置かれている環境は当然なのですが、そこに本音と建前があるということです。これは何も裏と表という意味ではなく、人間なら誰しも持っている「機微」を感じ取ることだと思います。もはや「波動」と言ってもいいかもしれません。たとえば、社長が当たっている風が、熱風なのか寒風なのか?はたまた激風なのか?微風なのか?、つまり対話力とは、相手の立場に立って想像を巡らせることではないでしょうか。1で1を理解する人もいれば、1で10を理解できる人もいます。その違いは相手の視点に立てるかで随分と変わってくるのだと思います。
J:なるほど。では「市場との対話」はいかがでしょうか?
S:市場との対話は、相手が機関投資家の場合はアナリスト等に変わるので、前提が変わるのではないでしょうか。相手が変われば視点も変わります。その場合の自分ならではの「引き出し」を持っているかだと思います。
J:でも投資家も多種多様な方々がいると思うので、大変ですよね。中村さんはどのように考えますか?
N:そうですね。社長は一人ですが、投資家は多種多様です。なのでマーケティング的に言えば、投資家の「ペルソナ」ごとに特徴をつかんで、それを類型化していく必要があります。そのパターンをつかんでいって、自分の対話力の「引き出し」を徐々に増やしていくしかないのではないでしょうか。
4:「最後に責任を負う社長」を支えるためにIR担当者がやるべきこと
J:とはいいつつ、あえて聞くのですが、「わかっちゃいるけど、株価におもい悩む社長」のためにIR担当者ができることって何なのでしょう?
S:すべては「準備」ではないでしょうか。これは新人の方には難しいことですが、一周回って経験すれば、準備することもわかると思います。たとえば、トップや社内にIR活動の前提を理解してもらうこと。アナリストに杓子定規の情報だけでなく相手の文脈を理解して背景情報を提供すること。その文脈を理解したうえで、咀嚼して、自分なりの考えを持っておくこと。それらが投資家への対話力を強め社長を支える力になる。これらは、社会人なら当たり前のスキルですが、それを徹底してやれているかだと思います。これは自戒を込めてなのですが、それには終わりはありません。特に対話力とは、人間力そのものです。例えて言うなら、IRはアートであり、総合格闘技のようなものですから、自分の強みを磨いていくしかない気がします。ここにIRの面白みと難しさがあるように思えます。
5:相手の意を汲む「コミュニケーション力」をひも解く
J:まさに言うは易し行うは難しですね。ではアナリストとの対話力をもう少し噛み砕いてもらえますか?
S:そうですね。様々なコミュニケーション力を発揮しなければなりませんが、要約すると以下の3点があげられます。
J:ありがとうございます。ここまでで3,000字超。もっと深堀りしたいですね。投資家・アナリストの立場や習性については、後編でお伺いしたいと思います。今日はありがとうございました。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
後編をお楽しみに。またnoteでお会いしましょう。
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