松本剛 チームリーダーの苦悩
背水の陣で臨んだ2022年、右打者として球団史上初の首位打者を獲得し、一気にチームの中心選手に成長した松本剛。
そして、エスコンフィールド元年となった2023年。打線の核だった同期が退団し、気がつけばブレイクからわずか一年で周囲からチームリーダーとしての活躍を期待される存在となっていた。
そんな中で一年間完走した松本剛の2023年についてレビューしていく。
1 基本スタッツ
2023年シーズンの基本的な打撃成績は以下のとおり。
2年連続3度目の規定打席に到達。安打数はキャリアハイとなる140本を記録。
昨季の打率が.347と異次元の数字だったため霞むが、打低が深刻な昨今のパ・リーグにおいては打率.276も十分上位に位置する。
とはいえ、レフトを守る選手としてOPS.665、wOBA.314は物足りない数字であることも事実。
松本剛のような仕掛けが早く四球の少ないタイプのコンタクトヒッターは、調子が悪いと出塁率の悪化が著しくなってしまうのが非常に苦しい。今季の6月(打率.205、出塁率.213)や8月(打率.231、出塁率.263)はその最たる例だろう。
出塁を武器にする以上、調子が悪いときにいかに出塁するかという点が更なるステップアップの鍵になるはずだ。
また、昨季は21盗塁/26企画で成功率が80.8%だったが、今季は12盗塁/24企画で成功率が50.0%と大幅に低下。昨季から続く脚の状態に悩まされ続けた一年となった。
【参考】2022年シーズン打撃成績
2 ブレイクダウン
より詳しく松本剛の今季の成績を昨季と比較してみる。
アプローチの面では、昨年とほとんど変わっておらず、昨季と今季の成績はまさにインプレーの打球の結果にのみ左右されていると言える。
打球の内容としては、ゴロアウトに対するエアアウト(ライナー・フライアウト)の比率が上昇。昨季外野の前に落とすことができていたヒットが外野手に捕られているか。
アウト打球の内訳を確認すると、二直と右飛の増加が顕著。
単に運で片づけることもできるが、バットコントロールを売りにする打者は、本人の中の少しの感覚のズレや集計されたデータに基づく他球団のシフティングによってヒットが減少しやすい。
なお、カーペットタイプの人工芝の札幌ドームから天然芝のエスコンフィールドに本拠地が移転したことの影響は、打率ベースで.306→.300と推移しているため、大きな影響はないと考えられる。
さて、次は左右・球種別成績で比較してみる。
右投手のムービング系の速球に苦しめられた一年となった。特に右投手のカットボールには43打数で22個のゴロアウトを記録。
左投手との対戦においては、ストレートを捉えきれず、反対に47打数で22個のエアアウトを記録。
やはり球種別でみても、特別空振りが増えた球種は存在せず、アプローチ面で大きく悪化した数字は見られない。
3 総括
BABIPは数年単位で収束する。
昨季が上振れしていたのか、はたまた今季が下振れしていたのかは、来季以降の成績で判断されることになるだろう。
昨季から続けてきたことを信じ、身体の状態を万全にして来季の開幕に臨んでくれれば、また素晴らしい成績を残してくれるはずだ。
来季もチームにとって貴重なコンタクトヒッターとして、難敵相手に突破口を切り開く活躍を期待したい。
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