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野村佑希 広い踊り場
2023年3月30日、エスコンフィールド元年の開幕戦。四番の座を射止め、ポジションは自身がプロ入りから守り続けてきたサード。これ以上ないシーズンインだった。
しかし、シーズンが始まってからは上手くいくことばかりではなかった。プロ入り後初めて大きな怪我なく過ごすことができたものの、6月にサードのポジションを清宮に譲り、7月には不調による登録抹消を経験するなど苦しい一年となった。
苦しみながら一年間怪我なく戦い抜いた野村の2023年についてレビューしていく。
1 基本スタッツ
2023年シーズンの基本的な打撃成績は以下のとおり。
![](https://assets.st-note.com/img/1698306739860-IXJ8qQpViC.png)
プロ初の規定打席に到達。積み上げ系の安打数、本塁打数はキャリアハイを記録。
打率、OPSその他の指標においては、昨年から軒並み下降。その中で四球%は向上している。
一軍再昇格後の8月に103打席でスラッシュライン.301/.359/.516を記録したが、長打率.450、OPS.750を超える月は8月のみとやや寂しい数字に。
追い込まれる前後で大きく成績が変化する。2ストライク後の打率は規定打席到達者中最下位。
6月以降は、入団当初から守ってきたサードを離れ、ファーストやレフト、DHがメインポジションとなった。
【参考】2022年シーズン打撃成績
![](https://assets.st-note.com/img/1698307075675-zCv4QYC0e6.png)
2 ブレイクダウン
より詳しく今季の成績を昨季と比較してみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1698476927238-3aDMluXk66.png?width=1200)
アプローチの面では、ボール球スイング%が改善し、四球の割合が増加。ストライク球スイング%も落ちているため、なんでもかんでも振るという傾向をやや抑えることでボール球を見極められる数が増えたか。
他方で、三振の割合が増えていることを筆頭に、2ストライク時の成績が悪化している。
打球のタイプからしてフライボールヒッターではあるが、こする打球が多く、打球速度が出ずにフェンス手前で打球が失速する印象。
さて、次は左右・球種別成績で比較してみる。
![](https://assets.st-note.com/img/1698476679742-CO3iXN1AQ8.png?width=1200)
曲がり球の成績が悪化しており、苦手としている落ちる球への対応にはあまり改善がなかった。右投手の落ちる球に対しては、2球に1球以上空振りしている。ストライクからボールに逃げる落ちる球を見逃すことも大事だが、それ以上にストライクゾーンに抜けて甘く入ってきたフォークやチェンジアップを確実に捉えることが、2ストライク後の成績を改善する鍵ではないだろうか。
ストレートを捉えて長打を打つという意識が高まっている。ただ、2年続けて右投手のボールゾーンへのストレートに25%以上手を出している点は改善が必要だろう。
![](https://assets.st-note.com/img/1698476282115-bsgypSk2A8.png?width=1200)
球速帯別で見ると、155キロ以上のボール球スイング%が高く、速い球に対して余裕がない状況。相対的に左投手よりも右投手に速いストレートを投げる投手が多いことから、右投手のストレートのボール球スイング%が高いと考えられる。
3 総括
ここまでやや厳しいことを書いてきたが、昨季の記事で書いた単打増加の傾向への懸念は今季で払拭されたと言っていいだろう。やはり野村の魅力はホームランであり、ホームランを狙うことが彼の価値の最大化に繋がるはずだ。その点では、成績的には昨年から下降したが、エスコンフィールドという新球場の特性からしても方向性は間違っていない。
思えば、2020年、彗星のごとく現れた19歳の野村は、開幕戦のスタメンの座を掴み取り、出場10試合目にはプロ初本塁打を記録した上で、1点ビハインドの9回にセンターオーバーの逆転サヨナラタイムリーを放ち、鮮烈なインパクトを残した。あのときは、誰もが彼の順風満帆な主軸への道を描いたはずだ。
あれから4シーズンを経て、思い描いた成長曲線とは違うかもしれないが、広い成長の踊り場を抜けた先には主力への階段が待っているはずだ。