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ポストシーズン開幕~CS 1stステージ展望~【F】

 7月以降の72試合を42勝27敗3分、勝率.609と非常に良い後半戦を過ごし、無事6シーズンぶりのAクラス入り、8シーズンぶりのCS本拠地開催を決めたファイターズ。
 ここから先はチームの多くの選手にとっては未知の領域のポストシーズン。
 まずはエスコンフィールド北海道で行われるファイターズvs.マリーンズの1stステージの展望をしたい。

1 2024年シーズンの両チーム

 今季の両チームの成績は以下のとおり。

※pDRS
 守備に依存しないイベントのみから投球能力を評価するifFIPから実際の失点率を差し引き、そこに守備イニング総数をかけ合わせ、投球能力以外の部分で何点抑止されたかを示す。
 運の要素やフレーミングなどは考慮外のため簡易的だが、一定の相関関係はある守備の独自指標。

 総じて見ると、ファイターズは打のチーム、マリーンズは投打ともに平均的なチームといった印象。
 それぞれのチームをより深堀りしてみよう。

2 ファイターズ

・打者

 間違いなくレイエス、清宮のチームであり、ここにいかに走者を置いて回すことができるか。ここに水谷、マルティネス、万波、郡司あたりのうち何人調子が良いかというチームだろう。
 センターラインの選手はシーズン終盤の打撃成績が低迷しており、どこからでも点が入るような打線から、ここにチャンスで回せば確実に点が入るという打線に、シーズン中に変化していった。
 ゆえに、清宮とレイエスに打席が回るイニングを上手くいなされてしまうとなかなか得点が入らないのも事実だろう。

・先発投手

 北山を除く他6投手がパ・リーグ平均よりも本塁打を打たれているのが特徴。チームとして守備力は平均を超えるため、奪三振数が少ない影響は抑えられるが、被本塁打は守備力ではどうしようもない
 後半戦に一気に成績を向上させた伊藤が軸なのは間違いない。

・リリーフ投手

 リリーフ陣は、勝ちパターンで使われる田中正や池田は平均を下回り、反対にビハインド展開で出てくる生田目と山本がチーム内トップ2の投球成績。
 エスコンフィールド、みずほPayPayドームと本塁打の出やすい球場で行われるCSでは、1点を争う終盤は被弾のリスクを抑えたいところ。

3 マリーンズ

・打者

 岡、角中らを筆頭に出塁能力の高い選手が名を連ね、打線全体で点をとるような印象。その中で一発のあるソト、ポランコを乗せないことが非常に重要だろう。

・先発投手

 佐々木、種市のパ・リーグの先発投手トップ2が君臨するローテーション。彼らが快調に投球をすれば難攻不落なことは間違いない。両者ともに奪三振能力が高いため、追い込まれるまでに決着をつけられるかが重要だろう。 

・リリーフ投手

 リリーフはファイターズと同様に絶対的な存在はいない。マリーンズは数字通り上位4投手を勝ちパターンとして起用している。

4 直接対決の傾向

 ファイターズとマリーンズとの今季の直接対決は18勝6敗1分とファイターズが圧倒的している。
 しかし内容にはそこまで大きな差があるわけではない。

・F打線vs.M投手陣

 ファイターズ打線は全体でみると、実はマリーンズ投手陣相手にそこまで打っていない。ただし、本塁打が多く出ており、ロースコアで試合に大きな影響を与える一発が出る印象は強い。
 清宮とレイエスが通算以上に打ちまくっているが、他に特別打っているのは水野くらいで田宮や万波は抑え込まれていると言ってもいいだろう。

 次にマリーンズの投手を見ていくと、先発投手トップ2の一角の種市を開幕2戦目こそ6回無失点と本来の投球を見せたが、その後の2試合はいずれも5回持たずにKOされており、種市を起用してくるかは気になるところ。
 リリーフでは、澤田、澤村といった勝ちパターン以外の投手でファイターズを抑え込んでいる投手が出てくる。他方でクローザーの益田は今季ファイターズに非常に相性が悪いため、勝ちパターンを少し再編して臨んでくる可能性もあるだろう。

・M打線vs.F投手陣

 マリーンズ打線は、ファイターズの投手陣に対して非常に相性が悪い。
 先ほど中心選手として紹介した岡も角中もシーズン通算に比べて抑え込まれている。警戒すべきは藤原と荻野(髙部もだが負傷離脱中のため割愛)。彼らが上位打線に名を連ね、出塁してソトや岡らに回ればかなりプレッシャーのかかる場面となるだろう。

 上で書いたことの裏返しにはなるが、シーズン通算の成績はよくないファイターズ投手陣だが、マリーンズ相手には良い成績を収めている。
 要因としては、被本塁打の少なさにある。マリーンズの本拠地が本塁打の出にくいZOZOマリンスタジアムであることに加えて、ソト、岡、ポランコあたりとの勝負を回避すれば一発のある打者が少ないことが追い風となっているのだろう。

 こうみると、1stステージの先発3投手は加藤、山﨑福、北山の3投手で決まりのようにも見えるが、伊藤はオールスター明けからの10登板でマリーンズと対戦しておらず、今の伊藤であればシーズン序盤の不利な対戦成績を覆す投球をする可能性も十分あるだろう。
 リリーフ陣も概ね好成績を収めており、ロースコアの展開でも逃げ切りに成功していたことが窺える。

・まとめ

 以上をまとめると、打ち勝つ野球で白星を重ねたファイターズだが、マリーンズ戦に限ってはロースコアで走者の出ない展開を本塁打で勝ち切るような戦いが多かったことが分かる。

5 キーマン

 打のキーマンは、清宮幸太郎水野達稀

 打線の並びがおそらく清宮、レイエスの順になることからして、清宮が出る=レイエスの打席をランナーを置いた状況で迎えることになる。相手もエース級を並べてくる短期決戦において、四球を選べて長打もある清宮幸太郎という存在がどれだけ大きいかを改めて知らしめるシリーズにしてほしい。

 水野は、復帰直後はなかなか打撃の状態が上がらなかったものの、終盤には春先の思い切りの良いバッティングが戻ってきている。
 マリーンズ戦の成績が良いことに加え、3打席目以降の成績が良く終盤の競った展開で集中力を発揮する選手のため、ここ一番での活躍に期待したい。

 投のキーマンは、加藤貴之山﨑福也

 ルーキーイヤーの2016年に、CSでは3勝2敗で迎えた第5戦に登板し1回4失点でKO、日本シリーズでは1 1/3回1失点でKOと悔しい思いをした加藤。あれから8年、佐々木朗希とのマッチアップのポストシーズン開幕の一戦で相性の良いマリーンズ相手に快投をしてほしい。

 山﨑福は、後半戦は不本意な投球も多かった中、8月の2先発で好投を見せたマリーンズを相手に打線を手球に取る投球ができるかがチームの命運を左右する。
 本塁打を打たれなければ四球も少なく、打球の死ぬエスコンフィールドとファイターズの守備力からして大量失点は考えづらい。チェンジアップの高ささえ間違えなければ、思い通りの組み立てができるはずだ。

6 戦いのポイント

 最後に短期決戦の戦いにおけるポイントをいくつか挙げたい。

まずは、初戦の重要性。

  CS未経験の選手の多いファイターズが、いつも通り戦えるかは、1STステージ初戦の最初のアウト、最初のヒット、最初の得点をいかに早く記録するかにかかっているといえるだろう。
 これが遅れてしまえば最大3試合しかない短期決戦では雰囲気にのまれたまま終わってしまう可能性もある。

次に、投手運用を含めた采配。

 マリーンズ戦では好成績を収めているが、ファイターズは勝ちパターンを固定できずにシーズンを終えている。シーズン中はその時々に調子の良い投手を起用してなんとかやりくりをしていた。
 ポストシーズンでは、投手の見切りが早くなり、リリーフの投球イニング数が増加するため、リリーフの重要性がレギュラーシーズンよりも高まる傾向にある。
 誰が好調なのかを見極め、リリーフ陣をどう序列付けるかが非常に重要になる。
 采配はレギュラーシーズンではそこまで大きな影響を持たないかもしれないが、短期決戦では采配で1試合を拾った落としたがそのシリーズを大きく左右することになる。チームの実力を引き出す采配に期待したい。

 色々と話してきたが、6年ぶりのポストシーズン。選手もファンも存分にこの舞台を楽しむことが一番。
 選手たちが普段通りプレーすれば間違いなく台風の目になれるだけの力を持っているはずだ。

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