#7 推しの議会傍聴行ってみた企画/世田谷区議会〜「世田谷はリベラル」は本当?〜
止まらない虐殺、気候危機、女性蔑視、あらゆるヘイト、暴力、冷笑、長時間労働、安い給料、一向に返済が終わらない奨学金、エトセトラ、エトセトラ。
ハロー。毎日いろんなことに傷つきながら(時にブチギレながら)、それでも粛々とたくましく生きているみなさん。今日も息してますか?
わたしは東京・世田谷で、つつましい生活を送っているフリーランスのライターで、清藤千秋と申します。仕事のかたわら、ボランティアをしたり、市民団体の会合に顔を出したり、たまにデモに行ったり、ゆるーーく市民活動をしてます。
昨年の統一地方選挙で、女性のための政策を公約に掲げたおのみずきさんという同い年・30歳(当時)の候補をFIFTYS PROJECTで知り、選挙ボランティアで応援しました。無事当選した彼女のサポーターとして今も活動していて、ここ一年、彼女の動向を追いかけに、ちょこちょこ議会傍聴をしています。
とはいえ、わたしは昔、選挙に行かない大学生で、政治をずっと遠く感じていました。でも、生きづれェ!(怒)というモヤモヤやイライラをちゃんと声に出し、政治に物申すフェミニストが周りにたくさんいたから、いつの間にか影響を受け現在に至ります。
ということで前置きが長くなってしまいましたが、このnoteは2024年6月に開催された「世田谷区議会第二回定例会」の一部を傍聴をした様子をお届けするレポートです!
昔のわたしと同じように「政治に興味ない」という方々に、少しでも「そうなんだ〜」って思えるポイントを見つけてもらえるよう、頑張って書いて参ろうと思います。
めっちゃ異空間の議会にとりあえずビビる
おのみずきさんの選挙ボランティアにも参加したとはいえ、まさか当選後も継続してサポートするなんて、当時は思ってもみませんでした。
そんなわたしを変えたのは、FIFTYSのあおいさんがまとめた、ちょうど一年前の世田谷区の議会傍聴レポートでした。
わたしはこの時傍聴していなかったのですが、おのさんの初質問の最中、ベテラン議員さんたちが大きな声でおしゃべりをするという事案が発生し、あおいさんはその様子をまとめていました。
この出来事は純粋に悲しかったし、本当に腹がたった。
おのさんに投票した一人の区民として何かできないだろうか、と思った時に、あおいさんが区に「陳情」を出すことを勧めてくれ、サポーターのみんなで「議会ハラスメントをなくそう陳情アクション」という活動を立ち上げることにしました。
その節は、ご協力いただいたみなさま、ありがとうございます。
そして、マジで議会傍聴、ちゃんとしなきゃな、と思いを新たにしたのです。
市民が傍聴をしていると、そのイシューに価値があるとアピールすることができるし、ハラスメントまがいのヤジの抑止にもなるから。
でも、現実問題、議会は平日の日中にやっているので、会社員とかが気軽に傍聴に行くのは難しい。
行ったら行ったで、慣れないうちはだいぶ辛いです。
ぶっちゃけ、去年に人生初の議会傍聴をした際のわたしの感想は、
「え、意味わからん……つまんねぇ……」でした。
議員の皆さん、行政職員の皆さん、まじごめんなさい……(FIFTYSにも怒られそう)
地方議会は、地域ごとにいろんなローカルルールがあり、特色もそれぞれなので、これはあくまでも世田谷の話ですが、まぁ、大まか似たような感じなのかなと思います。
議会はめっちゃ異空間でした。
これ、新人議員さんはバグるのでは……? と思ったな。
議員さんの質問はわかるんですけど、行政側の答弁がまじでアイデンティティクライシスに陥るレベルでよくわからん。
大した内容じゃなくてもそれっぽいことを言おうと粉飾してる感満載で、「結局何が言いたいの?」「結局どういうことなの?」と戸惑ってしまいまうことが多いです。
まぁ、国会の答弁もそんな感じですよね。
わたしが傍聴にいく時、だいたいいつも寝ている自民党のおじいちゃん議員が一人いらっしゃるのですが、「確かにこれは眠くなるかも」ってちょっと思っちゃった。
また、わたしは本会議の一般質問しか傍聴したことがないのですが、より細かいテーマを議論する「委員会」のほうが面白いみたいです。
「野球はよく分からないけど大谷翔平は好き」でいくことにした
本会議は、議員が質問に立ち、理事者(行政側)が答弁する、という進行でひたすら続いていきます。
議員が「これどうなってるんですか?」「これ、こうなってるけど大丈夫ですか?」と質問し、それに対して行政側が「こうなってます」「これからこういうふうにしていきます」と答弁するかんじ。
実は、本会議においては、議員の質問も、理事者の答弁も、事前にがっつり内容が申し合わせされてて、決まりきったことを読み合わせしてます。
それも初めて知った時にびっくりしたポイント。
え、区民は寸劇を見ているってこと? という感じなのですが、その申し合わせの「プロセス」こそが議員にとっては大事な大事なお仕事のようです。
世田谷区は、傍聴の区民が議場を撮影、録画するのはNG。
拍手もダメ。声を上げるのもダメ。
議事録がホームページに上がるのは2ヶ月も後になってから。
このへんの様子からも、世田谷区議会は区民に来て欲しい・関心を持ってほしいとはあんま思ってない感じでお届けしてる模様。
でも、区議会事務局の人たちはめっちゃ親切で、「これってどういうことですか?」「なんでこうなってるんですか?」と電話で質問したら、丁寧に教えてくれます。陳情活動中にわかったことなのですが、議員さんも、党・立場関係なく優しくて、話をちゃんと聞いてくださる方がほとんどです。
つまり、みなさんものすごく真摯なんですが、謎の規範や慣習に疑問を持って積極的に変えようとする雰囲気はないみたい。
わたしは、それが議員になるハードルを上げてると思うんだけどな〜。
と、ここまで書いた内容じゃ誰も議会傍聴行きたがらないよ! なのですが、一つ楽しむためのコツがあって、それはやっぱり自分の「推し」を見つけることです。
野球はよく分からないけど大谷翔平は好き。
将棋はよく分からないけど藤井聡太は好き。
わたしはそのスタンスで行くことにしました。
世田谷区議会でわたしが応援するのはおのみずきさん! ということで、ようやく6月11日の議会傍聴のレポートに入ります!
議会の配信アーカイブはこちらから見れます。
おのみずきさんの質問で初めて知った「女性支援新法」
世田谷区役所は現在新庁舎への建て替えのさなか。この日、わたしは初めて新しい議会に足を踏み入れました。傍聴席にもうっすら新しい木材らしき匂いが漂ってきます。
その日のおのさんは、super-KIKIさんの「Feminist × 家父長制の墓」Tシャツを着ていて、めっちゃイケてる!
傍聴席にはたぶん15名程度いたかなと思いますが、議員が指名されて議場に上がると拍手が上がる。
えっ、拍手してOKになった!?(ダメです) みんなを包み込む謎の新築テンション。
いつもジェンダー平等を進めるための素敵な質問をしてくれるおのさんが、今回大々的に取り上げたのは、「女性支援新法」についてでした。
2024年4月から、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」という新しい法律が施行されているのですが、みなさんご存じでした?
わたしはおのさんの質問で初めて知りました!
これまで、日本において女性を支援するための法的根拠は1956年に制定された「売春防止法」しかなかったそう。それは何かというと、戦後の混乱期に売春をする女性たちを「けしからん」と取り締まり、「婦人保護施設」で更生させるための法律。DVや性暴力、経済的困窮など、女性だから被ってしまう困難がこんなにもあるのに、66年も売春防止法でゴリ押ししてきたってなに!? さすがヘルジャパンですわ……
新しい法律を受け、市区町村にも女性支援の責務が課されましたが、おのさんの質問は、ざっくりまとめると、世田谷区に対して「支援のための庁内体制の整備をどうやって進めるつもりか」と見解を聞くものでした。
例の如く、理事者の回答がホゲホゲしててわたしはあんまり意味を理解できなかったので、今後の区の女性支援のあり方については、引き続きウォッチし続け、調べて行きたいなと思ってます。
レジェンド・上川あやさんの質問がニュースに
さて、仕事に戻る時間になってしまったので、気になっていた上川あやさんの質問はオンラインで聞くことにしました。
世田谷のレジェンド、上川あやさんは、2003年にトランスジェンダーの当事者として世田谷区議会議員選挙に立候補し、その後も当選し続けて20年!
カッコ良すぎる……。
事前に区のホームページで、上川さんの質問内容が「同性カップルにも住民票の続柄に異性の事実婚と同様の記載を」だったのを見て、気になっていたのです。ちょうど、長崎県大村市のニュースが話題になっていましたよね。保坂区長は上川さんの質問に対し、「制度設計について早急かつ具体的な検討を準備するよう関係所管に指示」と答弁。おぉ〜よかった……!
この議会の出来事は、その後ニュースメディアでも取り上げられていました。
6月11日のわたしの議会傍聴はこんな感じで、ジェンダーという自分の最も関心のあるテーマを追いかけて終わりました。
「世田谷区はリベラル」は本当なのか?
ここまで読んでくださったみなさんは、ジェンダー平等のために質問してくれる議員がちゃんといて、世田谷ってリベラルでいいな〜と思われる方も多いかもしれません。
でも、この一年、議会をちょこちょこ覗き、議員さんとも話してきたわたしが思うのは、「意外と保守的」ってこと。
それもそのはず、50人の議員の定数の中で最大の会派(派閥みたいなやつ)は14名の自民党で、やっぱこれがバリ強いのです。
昨年9月、「インボイス制度やめてくれ〜」という国への意見書(※1)は自公ほかの反対で否決でしたし、今年6月、地方自治法改正案に反対する国への意見書(※2)も自公ほかの反対で否決されてます。
そして今年4月、国の武器輸出やイスラエルからドローン購入というヤベェ動きを受け、市民から、武器の輸出入への提言も含めガザの停戦を求める国への意見書を議会から出してもらおうと働きかける動きがありました。
立憲・共産の議員との会合にわたしも末席で顔を出したのですが、「自民を巻き込むのは無理」と立憲が渋り、断念。
また、ある市民団体は、女性差別撤廃条約の選択議定書への批准を求める国への意見書を議会から出してもらいたい、と画策していますが、今の議会構成で可決は無理……と頭を悩ませています。
世田谷区議会は、普通にこの国の縮図じゃん、と思います。
リベラルっつっても、ジェンダー観だけバグってる「リベラルおじ」ばっかですよ。女性議員の比率が40%なんてドヤ顔されても、質問に答える行政側の課長・部長クラスは9割型おじさんだし。「自虐史観を正し、郷土愛や愛国心を育めば長期的に子どもを産みたいと思うのではないか」とか超怖ェ質問する参政党の議員もいらっしゃるし。
ネットスラングに「世田谷自然左翼」というのがあって、世田谷のリベラルさがディスられることがあるのですが、そんなん全力で謙遜(?)しなければなるまいよ……と思っている今日この頃です。
(※1)正式名称「適格請求書等保存方式(インボイス制度)について延期も含め慎重に検討することを求める意見書」
(※2)正式名称「地方自治の自主性・自立性が守られることを求める意見書」
みんなで、この地獄をもっとマシな地獄にしたい
冒頭に書いたように、わたしは選挙に行かない時期もあり、また、長らく「とりあえず投票はするがあとは知らん」という人生を送ってきました。
でも、ものすごく能力のある人がものすごいエレベーターを作ってくれて、それに皆んなで乗り込んでボタンを押したら「楽園」のある階までブーンと連れて行ってもらえるわけじゃないんですよね。わたしたちがやらないといけないのは、もっと泥臭いこと。みんなで一段ずつ階段を作って、今いる地獄からもっとマシな地獄に行こうと努力し続けるということだと思います。
だからわたしは、議員さんに大事なことを任せっぱなしにするんじゃなくて、時間とお金の許す限り、自分も何かをしなければ、と考えるようになりました。
とはいえ、デモを歩いている時も、路上で署名活動をしている時も、希望と絶望に両方から引き裂かれそうです。
世界が変わるのには時間がかかる、という現実を、頭ではわかっているけど、たぶん、わたしはまだ受け入れられていないのだと思います。
ジェンダー平等まであと134年かかるって(世界経済フォーラム情報)、どういう顔すればいいの?
でも、この前、FIFTYS PROJECTのイベントに登壇されていた上野千鶴子さんがおっしゃっていました。
「わたくしも頑張ってきましたが、でも微力でした。たくさんは変えられなかった、でもちょっとは変えました。次はみなさま方の番です、おわり」
泣いちゃった。なんて果てしないんだろう。
頑張るしかないじゃんそんなの。
すみません、めっちゃ長くなりましたが、みんなで、この地獄をみんなで少しでもマシな地獄にしてこ、って話がしたかったのです。
一人でぐるぐる悩んでるとやっぱ死にたくなっちゃうから、署名するとかSNSで政治の発信をするとかデモ行くとか、なんでもいいのでとりあえず何かをして、仲間と語り合い、助け合わないとですよね。
以上、世田谷からお届けしました!
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