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FIFTYS PROJECTゼミ 第2回 「災害とDV、性暴力、貧困の現実ー阪神淡路大震災〜東日本大震災の女性支援活動から見えたことー」

(i女のしんぶん1329号より転載)

 災害などの非常事態で、女性や子どもが暴力に遭うリスクが高くなることは国際的にも知られている。DV、虐待、性暴力などだ。95年の阪神淡路大震災の際、女性は男性よりも1000人多く亡くなり、10万人近くのパート労働者の女性が職を失った。ウィメンズネット・こうべにはDVに関する多くの相談が寄せられたが、女性たちは皆「こんな家庭内のつまらない揉め事を相談する私はわがままでしょうか」と口にしたという。暴力が家庭内のつまらない揉め事だなんて!と胸が痛むが、DV防止法の成立は2001年。日頃、ミレニアル世代のフェミニストとして日本のジェンダーギャップを嘆く私だが、正井禮子さんの回顧を聞き、前進したことも確かにあるのだと実感した。

 「当時女性に対する暴力は全く問題とされておらず、警察や公的機関にもDVや性暴力への理解が進んでいませんでした」と正井さんは語る。「避難所で性加害があった時、県の職員が呼ばれて行ったら、避難所の責任者の男性に『加害者も被災者やで、多めに見たれ』と言われ、唖然としたと」。

 また、お話の中で衝撃的だったのは、当時、被災地での性暴力は全てデマだとする『被災地神戸「レイプ多発」伝説の作られ方』という記事が雑誌に掲載されたということ。正井さんは実名が掲載され、ひどいバッシングにあったそうだ。正井さんや、実際に被害にあった方々がどれほど傷ついたか、第三者として話を聞いているだけでも身を切られるように辛い。

 そして2011年の東日本大震災。相談窓口やDV防止を啓発するポスターが避難所や仮設住宅に配布され、無料のホットラインも開設されるなど、女性に対する暴力防止の取り組みは95年から変化が見られた。しかし、避難所や仮設住宅の運営リーダーは依然として圧倒的に男性。「配慮」をされるだけでは不十分で、女性が実際に運営に「参画」しニーズに応えていく環境を作ることの大切さを正井さんは強調する。

 余談になるが、私はウェブメディアで働いていた頃「災害対策と女性の視点」をテーマにネット番組を企画をしたことがある。その関連で内閣府の「東日本大震災の復興に関わる委員の中での女性の割合=14.6%」のデータをTwitter(現X)で投げかけたところ、「性別は関係ない」というコメントが大量についてプチ炎上してしまった。社会的な立場の違い、異なる身体を持つが故に必要な措置があるという話がこうも理解されないのか、とショックを受けた。能登半島地震においても、避難所における生理用品の不足や、生理への知識が不十分な男性が多い実態が浮き彫りになったばかりだ。

 「災害時には平常時から存在する女性や子どもの脆弱性が増強する」と正井さんは繰り返した。知らず知らずのうちに「健常者のシスヘテロ男性」のために設計されてしまっているあらゆるものの周辺で、私たちは引き続き声を上げていかなければならないのだ。

文・清藤千秋
instagram https://www.instagram.com/chiakiseito


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  1. 「ジェンダーレンズを確立する(=ジェンダー観点を以て物事を見る力を会得する)」

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